研究課題/領域番号 |
26630090
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲葉 雅幸 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50184726)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ロボティクス / メカトロニクス / ロボット材料 / 機電要素一体 / 三次元プリンタ / 融着造形 / 機能性材料 |
研究実績の概要 |
厳しい空間制約条件下で様々な要素をパッケージングすることが求められるロボット設計において,構造体要素だけでなく,機構要素,センサ,アクチュエータ,電装等のメカトロ要素を組合わせた機能構造組織を一体で造形する機電要素一体型融着造形法の実現に向けて研究を進めている.積層造形に何種類かの樹脂素材を異種の樹脂・部品に融着・接着する試作の実験より接着物質と樹脂の接着相性による剥離が起こりやすいものがある.特に,ロボット外装に利用が期待された柔軟PLAは従来の3Dプリンタで利用される単純な射出機構だけでは積層が難しく,また,他物質との接着相性が悪いことが判明してきている.ゴム素材・カーボン素材に異種部品を埋め込む試験も行なっている. 腱駆動ロボットはアクチュエータによるワイヤの巻取りによってによって駆動されるが,そのワイヤの張力計測の高精度化,環境外力からのロボットの保護が可能な,ウレタンゴムによる外装の実現に向け,硬質ウレタンゴムから発泡ウレタンゴム等を組み合わせ,歪ゲージや圧力センサを埋め込み利用する試作を進めた.現在は型を利用し人の手によりウレタンゴムの流し込み・成形を行いこの過程を自動化・微細化させる手法を検討中である.異種物質を組み合わせることが困難であるということから,単一物質に複数の機能をもたせる機能多重性設計の試作を開始し,アルミニウム粉末焼結による3Dプリンタを利用し,レーザー条件を変えることでその部品に複数の機能・特性を持たせる造形を試行している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ロボットの組織を一体で造形する機電要素一体融着造形法を明らかにする上で6軸アームのエンドエフェクタに3Dプリンタのノズルヘッドを設置すす方法での積層試作では,通常の3Dプリンタと同様の1軸方向からの積層型造形は精度の問題と溶着具合の温度管理に帰着される.本質的に,一軸方向からの積層では達成できない三次元構造として電子部品を埋め込み一体成型するという機電要素一体造形では多軸方向からの溶着と造形が不可欠となる.そのためには,空間計画法と視覚計測装置による形状計測の研究開発を行ってゆくこととなる.これについては,研究室における他の研究課題における基盤基盤を利用することで構築対象を定めれば試行可能な環境がすでに整っている. また,本研究課題であるロボット用着脱可能な機能組織体としての評価項目の観点からは,融着可能な材料の硬化後の強度・導電性・伝熱性能等の機能要求とその材料に応じた造形法に対する研究の方が機電要素一体融着造形法が重要となることから,機能性材料を利用した構成法へ着手しつつある.一つは,カーボン素材にインサート等の機械要素を埋め込むことに加え,素材の電磁シールド性の活用・構成の煩雑さの解消,電装要素であるケーブルを埋め込む試験,ひずみゲージの埋め込み骨格の負荷を常時計測・監視するセンサ一体構成法の試作を行い,実ロボット身体に組み込み可能なものとすることの試行を進めており,当初計画していた以上の内容へ進展してきている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果を元に,今年推進しようと考えているものは以下の2項目に大別して行う. (1) ゴム素材・カーボン素材への電装部品を埋め込んだ試験を終え,実ロボットに組込可能な機能構造組織を完成させる. カーボン素材については,ケーブル・センサを埋め込んだ骨格を設計する見通しが立ってきており,利用効果を評価できる見通しがたっている. (2) 異種物質の組み合わせではなく,単一物質に複数機能を配置する機能多重性設計についての研究を並行して進める.アルミニウムの粉末焼結による3Dプリンタを利用し,形状やレーザー条件を変えることでその部品に複数の機能・特性を持たせる造形が可能と考えている.また,鉄系素材の粉末焼結3Dプリンタによって水管を内部に造形し,効率的な冷却を可能とする金型製作技術が存在するが,粉末焼結の造形によって単に構造体の造形でなくその内部に他の機能を有する機構を内包させることが可能というのは3Dプリンティングの利点である.ロボットにおいては特に空間制約が厳しいこと・放熱が問題となることから,アルミニウムがロボットを構成するための構造体としてだけでなく同時に熱伝導・放熱するための物質としても利用可能とする造形方式を確立できる可能性がでてきている. 以上の項目を通して,レーザーの照射条件を変えることで新たな機能を付加することにより「機電要素一体融着造形法」を発展させた「機能多重性設計法」の確立を目指し研究を進め,挑戦的萌芽研究の知見を総括する.
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