多様な凹凸面に吸着するタコの吸盤を参考に、人体臓器を安全に吸着把持してハンドリングできるソフトフィンガーの創製に挑戦した。すなわち、腹腔鏡手術において、直径12mm程度の穴を通じて腹腔内に挿入後、術者の視界を遮る臓器を傷つけずに圧排する手術器具の開発を試みた。その実現にあたり次の3つの観点から研究を行った。すなわち、i)可変容積式吸盤の設計手法の構築、ii)ソフトフィンガー構造の開発、iii)漏斗構造の高機能化、である。まず、i)については、可変容積式吸盤で使用する弾性膜において、望ましい変形特性を明らかにした。これにより、当該吸盤の吸着力を生成する原理のモデル化が可能となり、限られたスペース内で吸着力を最大化する最適設計法を誘導することができた。次に、ii)については、弾性膜内に発泡粒子を封入し、吸引による構造体の剛性変化を図った。吸引圧・発泡粒子の量・剛性との関係を調べ、臓器の吸着動作に適する設計手法を明らかとした。さらに、iii)については、タコの吸盤の先端に有する漏斗部に模した構造をPDMSにより製作し、その有効性を確かめた。鶏肉や豚の肝臓などを用いた実験により、提案手法の有効性を実験的に検証した。
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