26年度、電気的に制御可能な伸縮シートとしてテキスタイル構造とその伸縮メカニズムを提案した。そして、縦糸と横糸が交叉する1点を抽出、モデル化し、簡易評価装置によりその実現可能性を概ね検証することに成功した。27年度はこの成果を踏まえ,複数の縦糸、横糸で織ったテキスタイルシートを作製し、基本特性の評価をした。以下に具体的内容を記す。テキスタイルシートの作製には導電性芯鞘ファイバーの作製がキーとなるが、円形断面構造は難易度が高いため矩形断面のファイバーを作製した。縦糸(陰極)には矩形断面(厚み0.25mm、幅4.3mm)の中央部にカーボンブラックにより導電性(抵抗値50kΩ、測定端子間距離1cm)を付与したPVCゲルファイバー(厚み0.012mm、幅1mm)を設置した7本の導電性芯鞘PVCゲルファイバーを用いた。横糸(陽極)には6本のアルミニウム箔中空棒(直径φ3.2mm、0.027g)を用いて平織テキスタイルシートを作製した。これに電圧印加すると陰極の導電性芯鞘ファイバーの鞘であるPVCゲルが陽極のアルミニウム箔中空棒に吸着し曲げ歪みが発生するため,シート全体が収縮し、電圧印加を解除すると元の状態に戻った。収縮時の発生力及び負荷がかかったときの応答性を評価するためシート下端に板重り1gをPV貼り付けた.この様子をカメラで撮影し画像解析により変位挙動を解析した。具体的には基準値としたシート長さに対して印加電圧400V、負荷のないときでは約9%、負荷1gで約3%収縮することがわかった。また、電圧印加直後の時間経過に伴う変位量を確認したところ600V、無負荷では約5秒、負荷1gでは約10秒後に一定に達し、負荷が大きくなるほど定常状態に到達するまでの時間が長くなることがわかった。この結果、収縮率や応答性は負荷に依存するものの制御可能な伸縮テキスタイルシートの実現可能性を検証できた。
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