公称分解能10ナノメートルかつ2kHz応答周波数を有するピエゾアクチュエータとシリンジをバックラッシュレス接合してシリンジポンプを構成し,5kHzサンプリングレートを有する高速ビジョンを顕微鏡内に設置し,マイクロ流路内の細胞位置情報を取得して制御用コンピュータにフィードバックし,サンプリングレート1kHzの制御系を構築した.次にフィードバック制御用ソフトを開発し,ステップ応答指令に対するピエゾアクチュエータ応答,マイクロチップ変形応答,細胞の変位応答をそれぞれ高速ビジョンで取得し,各部位での応答時定数と細胞の位置決め分解能を評価した.制御パラメータを最適化し,ビジョンセンサのピクセル限界とも言える 250ナノメートル分解能した.さらに周波数応答については,80Hzまで位相遅れ180度以内を維持することができた. マイクロ流路を用いた細胞の位置決め分解能はこれまで1マイクロメートルが上限となっていた.本研究はこれまでの上限を“仮想減速器”の効果を利用して一気に4倍引き上げることに成功したことになる.細胞の位置決め分解能の向上は,マクロレベルの細胞特性試験のレベルアップに直結する.これまでにない繊細な動きを細胞に能動的に与え,そのときの細胞変形を高分解能で計測された位置情報,速度情報に対して相関をとることで,いままでに見れなかった細胞特性を見出せる可能性を秘めていることを強調しておきたい.
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