研究課題/領域番号 |
26630100
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
川原 知洋 九州工業大学, 若手研究者フロンティア研究アカデミー, 准教授 (20575162)
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研究分担者 |
黄 文敬 九州工業大学, 若手研究者フロンティア研究アカデミー, 研究員 (00633413)
大塚 弘文 熊本高等専門学校, 制御情報システム工学科, 教授 (10223869)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 循環器シミュレータ / ニワトリ胚 / マイクロマニピュレータ |
研究実績の概要 |
本研究では,倫理的な敷居が低くかつ低コストで培養できるニワトリ胚を透明人工殻(Cube)内で長期培養しつつ,血管を外部のマイクロチップ(Chip)と連結することで,血液を循環させながら試験が行える全く新しいプラットホームの構築を目的としている.本年度は以下のような研究を行った.
・血管形成位置の誘導方法の確立:人工殻の酸素透過率のパターンを様々に変化させることで,血管の形成位置にどのように影響があるかを詳細に調べた.まず,cm~mmサイズのパターンを作製し,ニワトリ胚の血管網がどのように形成されるかを確認するとともに,マクロな領域での血管形成誘導が可能であることを示した.続いて,mm~umサイズのパターンを作製し,微細血管レベルでどのように血管が形成されていくかについて観察と評価を行った.
・3自由度マニピュレータの作製:ACサーボモータとピエゾ回転ステージを組み合わせ,透明人工殻の近傍に設置できる小型のマスタースレーブ型3自由度マニピュレータを作製し,手先位置決め精度が数10umであることを確認した.また,双腕にすることで遠隔操作により血管の微細操作が可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の特色は,微細血管の接続を血管形成位置を酸素量で誘導する技術とロボットによる微細操作技術を組み合わせることで実現しようという点である.これまでの研究において,連結を達成するための血管誘導技術とロボットの開発を達成しており,研究は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
血管との接合の実現:誘導した血管を顕微鏡で観察しながらマニピュレータで針の姿勢と位置を制御し,人工殻の膜を貫通させて血管内部に差し込むことで血管との接合を試みる.針にはチューブを取り付けておき,針を挿入した後に血液が正常に取り出せるかを確認する.また,針との接合を行った後の血管の形態については,培養を10日まで続けた後にニワトリ胚全体を薬剤で固定化し,顕微鏡やマイクロCTで観察を行うことで,組織・細胞レベルでの形態変化やダメージの有無を詳細に調べる.
血管同定方法の検討:最終的にマイクロチップに接合して血液の循環を達成するには,少なくとも2箇所の接合が必要になる.したがって,接合する血管を事前に同定する方法の検討を行う.具体的には,透明人工殻の2方向以上から撮影した映像データを用い,血管形状・配向性・血流の方向等の情報を用いることで,動脈と静脈の位置から伸びる微細血管を各々推定しターゲットとなる血管位置を確定する.
マイクロチップとの接続:血管径と同程度(幅・深さ:数100 um)の流路を有するマイクロチップを作製し,透明人工殻と接続することでチップ内に血液に導入することを試みる.この時,バイオ応用への可能性も検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた物品を代替品で安価に調達できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
さらに研究を進めるために,エンドエフェクタを開発する際の部品を購入する費用,加工を外注するための費用,及び電気電子部品を購入するための費用として執行する計画である.
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