自律駆動ゲルを用いたポンプの開発を行った.自律駆動ゲルは振動性の化学反応であるBZ反応を刺激応答性ゲルの内部で誘起することで,体積の膨潤・収縮運動を生成する.薬物放出用のポンプへ適用する場合,反応系(システム)と外部の環境を分ける必要がある.これまで,ゲルの拍動によって流体拍動などが得られることはモデルと実験から明らかにしていたが,システムを外部環境と区別して設計するには至っていなかった.本研究では,自律駆動ゲルを設置する閉空間にゲルを設置するために,IPN(Inter Penetrated Network)構造を利用したゲルの設置方法を開発し,ゲルの拍動が外部環境へ仕事をすることに成功した.具体的には,円柱形状の自律駆動ゲルの両端にPoly(Acrylamide)(PAAm)-co-Poly(Acrylic acid)(PAAc)ゲルを接合した.PAAm-co-PAAcには鋳型を用いて穴を作成し,その穴にフック状の部材を差すことで固定した.このPAAm-co-PAAcゲルはハイドロゲルであるが自律駆動ゲルに比べて十分硬いために扱い易いことと力を取り出すことができる.PAAm-co-PAAcと自励振動ゲルの接着はIPN構造を保持しているため高分子鎖同士が絡みあうことで,固定が実現した.計測実験では1mM程度の力が得られていたので,この値から薬物放出用の膜を設計し,系外へ仕事(拍動)を取り出すことに成功した.これまでは,溶液の中でゲルが前進運動,拍動,蠕動運動などを実現してきたが系外へ仕事ができたのは初めてであり,デバイス化への第一歩だと考えられ意義深い結果だと言える.
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