研究課題/領域番号 |
26630104
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
津田 理 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10267411)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超電導ケーブル / ヒートパイプ / 伝導冷却 / 冷却特性 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、まず三相同一軸型ケーブルの平衡モデルを用いて、通常の三相同一軸型ケーブルの熱特性、流体特性解析を行い、ケーブル内部の温度分布を解析した。その結果、冷媒の復路出口における温度がケーブル内部で最高となり、外側流路の冷媒の温度上昇を抑制することが冷却特性改善に有効となることがわかった。次に、三相同一軸型ケーブル導体部に、ヒートパイプと同様の構造、物性値、熱伝達特性を有する、常に65 Kとなるパイプを挿入した場合について解析を行った。その結果、外側流路の冷媒温度に影響を及ぼす熱をより効果的に吸収するには、ヒートパイプを可能な限り導体部の外側に設置すること、及び、熱伝導率が低く熱拡散の遅い絶縁層とは接触しないよう層間に設置することが望ましいことがわかった。以上より、c相のCu安定化層とHTS層との間にヒートパイプを挿入することが最適であるといえる。次に、ヒートパイプを適用した三相同一軸型超電導ケーブルについて伝熱解析および流体解析を行った。その結果、ヒートパイプを挿入することでケーブルの導体径が増加し、冷媒の圧力損失が増大するものの、ヒートパイプの冷却効果が発熱作用を上回り、ケーブル内部の冷却特性を改善できることがわかった。また、冷媒を安定的に供給できる最大距離は、従来の三相同一軸型ケーブルよりもヒートパイプを適用した場合の方が大きくなり、最適流量を少なくできることがわかった。次に、ケーブル外径に制約がない場合について検討したところ、断熱管の内径が大きくなるにつれ冷媒の圧力損失が減少し、冷却特性が改善されて最大距離が大きくなるものの、断熱管内径が160 mmを超えると内側流路の圧力損失が支配的となるため、最大許容ケーブル長を長くできないことがわかった。以上より、断熱管内径が大きい場合、内側、外側流路の圧力損失の合計が最小となるように設計することが望ましいといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日本の将来のエネルギー確保に不可欠となる、日本と大陸間の低損失型海峡横断電力ケーブルに超電導ケーブルを適用する場合のボトルネックとなる、冷却可能距離の長距離化のブレイクスルーを目指す、ヒートパイプ用いた伝導冷却型超電導ケーブルの実現可能性の検証を目的とするものである。平成26年度は、まず、ヒートパイプを適用した伝導冷却型超電導ケーブルの基本設計を行い、三次元有限要素法熱解析を用いて、従来の液体窒素冷却型ケーブルとの冷却特性の違いを明確にすることを予定していたが、実際に、三相同一軸型超電導ケーブルにヒートパイプを適用しない場合と適用した場合ついて伝熱解析および流体解析を行い、ヒートパイプを挿入することでケーブルの導体径が増加し、冷媒の圧力損失が増大するものの、ヒートパイプの冷却効果が発熱作用を上回り、ケーブル内部の冷却特性を改善できること、また、冷媒を安定的に供給できる最大距離は、従来の三相同一軸型ケーブルよりもヒートパイプを適用した場合の方が大きくなり、最適流量を少なくできることを明らかにすることに成功している。よって、現時点では、本研究は順調に進展しているといえる。今後は、ヒートパイプを用いたモデルケーブルを製作し、ケーブル長手方向の温度分布測定を通じて、ヒートパイプの高熱伝導性と実現可能性を検証するとともに、長距離送電用超電導ケーブルに適したヒートパイプの構成方法やケーブル断面構成方法を明確にしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、伝導冷却型超電導モデルケーブルにおける冷却特性試験に関して、以下の3点について検討する。まず、ヒートパイプを用いた伝導冷却型超電導モデルケーブルを設計・製作する。高温超電導テープ線(Bi2223テープ線またはYBCOテープ線)は、テープ構成や熱特性が大きく異なるため、両線材を用いたモデルケーブルを製作し、伝導冷却型超電導ケーブルに適した超電導テープ線を明確にする。なお、ケーブル長手方向の温度分布測定には低温用温度センサーを使用し、超電導テープ線表面および断熱層の内側・外側の温度測定を行う。そして、超電導テープ線の内側と外側(両者とも、絶縁テープを介して超電導テープ線に接触)、ケーブルの断熱層の内側にそれぞれヒートパイプを設置したケーブルを製作する。次に、高温超電導テープ線材料やスーパーインシュレーションの層数をパラメータとして、ヒートパイプを使用しない場合のケーブル長手方向の温度分布測定を行う。そして、ヒートパイプを適用したモデルケーブルにおいて、同様の試験を行い、ケーブル内の最高到達温度の比較を行う。また、モデルケーブルを、水平方向だけでなく、鉛直方向にも配置することで、ヒートパイプの熱伝達特性がモデルケーブルの冷却特性に及ぼす影響について検討する。次に、ヒートパイプの設置場所の異なるモデルケーブルを用いて冷却特性試験を実施し、ヒートパイプの設置場所がケーブル内の温度分布に及ぼす影響について検討する。なお、本試験でもモデルケーブルの設置方法(水平配置や鉛直配置)やケーブル断熱層の断熱特性をパラメータとして試験する。最後に、以上の実験結果と解析結果より、伝導冷却型超電導ケーブルに適したヒートパイプ構成方法やケーブル全体を超電導状態に維持できるケーブル長を明確にするとともに、ヒートパイプを適用した伝導冷却型超電導ケーブルの有効性の検証を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はモデルケーブル作製用超電導線材の購入を予定していたが、超電導線材の製造企業が、他社からの受注品の製造に時間を要し、東北大からの発注分を年度内に納品できなくなったため(超電導線材を購入できなくなったため)。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、伝導冷却型超電導モデルケーブルにおける冷却特性試験に関して、ヒートパイプを用いた伝導冷却型超電導モデルケーブルを製作する予定であるため、繰り越し分は、モデルケーブル作製に必要となる部材購入に使用する予定である。
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