研究課題/領域番号 |
26630105
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小野 亮 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (90323443)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラズマ支援燃焼 / 希薄燃焼 / 低エミッション / ストリーマ放電 / 活性種 |
研究実績の概要 |
バリア放電によるプラズマ無炎燃焼リアクタのプロトタイプを作製し、プラズマ無炎燃焼の実験を行った。石英管を用いて同心軸円筒型バリア放電リアクタを構築し、ここに400度以上に予熱した空気とメタンの希薄混合気を流してバリア放電を印可した。バリア放電には、本研究費で購入した高周波パルス電源(30kV、100ns、500pps)を用いた。そして、燃焼排ガス中のNOx、HC(hydrocarbon、すなわち燃え残った炭化水素)、CO、CO2の濃度を測定した。等量比0.3という超希薄混合気を用いた実験では、放電による多少の無炎燃焼反応の発生に成功したが、現在のところ燃焼率はまだ低く、多くのNOxとCOが発生するという望ましくない結果に終わっている。しかしながら、本研究のファーストステップとして、超希薄混合気にプラズマを作用させて、わずかでも無炎燃焼を発生させるという目的は達成できた。 これと並行して、高温下でのストリーマ放電の基礎特性を測定する研究も立ち上げている。1200度まで加熱できる電気炉を用いて、高温空気中における針-平板および同軸円筒型リアクタによるストリーマ放電の特性を測定する。このような高温下での研究はこれまで経験がないため、電極の金属材料や絶縁材料の選定、加工に大きく手間取り実験はやや遅れているが、実験を行える態勢を整えつつある。高温下における実験のノウハウを蓄積できたことも、本研究の遂行に向けた本年度の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、最大1500度以上に達する高温下での実験である。このような高温下での実験はこれまでに経験がなかったため、特に耐熱材料の選定および加工に大きく手間取り、進展が遅れている。また、プラスチックや一般的なガラスや金属は利用できず、耐熱・耐腐食金属、耐熱石英、セラミックスなどを使用するため、装置が破損するたびに修理の予算と時間が予想以上にかかり、研究の進展を遅らせている。したがって達成度の遅れた理由は、この高温下での実験であるが故の困難という点にほぼ集約される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目的は、プラズマ無炎燃焼で「NOx、CO、HCそれぞれ10ppm以下」のゼロ・エミッションを達成することである。しかし先に述べたように高温下での実験に伴う様々な困難により実験が遅れているため、あと1年でこの目標を達成するのはやや困難を感じている。そこで、当面の目標を「プラズマ無炎燃焼における、燃焼率およびエミッション濃度と放電パラメータの関係の調査」として、超希薄燃焼をプラズマ無炎燃焼でどの程度改善できるかについて調査する。そして、ゼロ・エミッションの最終目的を達成するための指針を得ることを目的とする。また、高温下でのストリーマ放電特性の変化を詳細に調べ、高温下でどのような放電を発生させるのが最適かを検討する際の指針とする。具体的には、温度を上げた時のストリーマの進展速度、太さや本数などの形状、消費エネルギー、放電発生電圧などがどのように変化するかを測定する。高温下では圧力一定のもとで密度が減少するため、電界と気体密度の比E/N、いわゆる換算電界が変化するため、放電特性は電圧一定のもとでは大きく変化することが予想される。また、これほどの高温下では振動励起N2(v)が大量に発生するため、N2(v)から電子にエネルギーを受け渡す超弾性衝突も発生し、これも放電特性を変化させると予想される。この他、プラズマ支援燃焼で重要な活性種であるOHラジカルの密度が、温度によりどのように変化するかを測定する。測定にはレーザー吸収計測を計画しており、その準備も進めている。
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備考 |
なし
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