バリア放電によるプラズマ無炎燃焼リアクタを作製し、実験を行った。石英管を用いて同心軸円筒型バリア放電リアクタを構築し、ここに400~500度に予熱した空気とメタンの希薄予混合気を流してバリア放電を印可した。その結果、空気の予熱温度500度、等量比0.37の希薄燃焼条件において、放電パワーを燃焼熱の3.7%としたときにNOx濃度26ppmの結果を得た。この等量比では放電なしでは燃焼は安定せず、放電プラズマにより燃焼が安定化されていることが確認できた。HCは計測器の測定限界である数100ppmまで減少した。COは計測器の故障により測定できなかったが、CO2はメタンの初期濃度と同程度まで増えていたため、少なくとも大部分のCOはCO2に酸化していたものと考えられる。 本研究では、重要なパラメータである放電領域通過後の燃焼ガスの温度を測定できなかった。熱電対を放電領域に近づけることができなかったためである。また、装置の制約上、放電リアクタは内径25mmと細く、リアクタの断熱も不十分であったため、混合気がリアクタ壁面で冷却され十分な精度の実験ができなかった。しかし、0.37という希薄領域でほぼすべての燃料が燃焼した結果としてNOxはわずか26ppmしか発生しておらず、本手法が低NOxの希薄燃焼方式として有望である可能性を示唆することができた。 本実験では500~1000度の高温下でバリア放電を発生させるが、このような高温下でのバリア放電、すなわちストリーマ放電の研究はほとんどなされておらず、高温下での放電特性が予測できない。そこで、900度まで加熱した空気中でストリーマ放電を発生させ、その放電特性を調べる研究も行った。研究成果はPlasma Sources Science and Technologyに投稿中である。
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