研究課題
本年度においては、まずPCB処理プロセスの非水系溶媒中での水素プラズマを対象として、その反応プラズマの反応性の強さを表す指標として、電子温度に着目した。二波長発光分光計測を行うことにより、各プラズマの電子温度を求めることができる。また、プラズマの形態から本水素プラズマは熱平衡状態が仮定でき、電子温度より、水素分子の解離度・電離度を求めることができる。また、ICCDカメラと干渉フィルタを用いた二次元観測システムを構築することにより、プラズマ反応場の量に相当する指標である、プラズマの発光数も併せて計測できるシステムを構築した。マイクロ波照射プロセスにおいては、マイクロ波による誘電加熱(熱的作用)と、電界によるプラズマ生成(非熱的作用)の効果が混在してしまうため、これらを切り分けられるよう温度条件は等しくしたデータの取得を試みた。本年度においては、マイクロ波の照射条件は変えずに、雰囲気圧力を0.4bar~1.0barとすることで、マイクロ波プラズマの発生様相を変化させて、PCB分解効率への水素プラズマの影響を、上記の構築した測定システムを用いて測定した。その結果、圧力を減少させると、それに伴い発光数が増えたが、明確な分解率の向上は確認できなかった。ガス圧力を減らしたことにより、気体の数密度も減ったことによるトレードオフの可能性がある。次年度においては溶液を別途冷却するシステムを導入を検討している。得られた知見をもとに、効果的にプラズマを生成できる触媒構造、形状を提案し、触媒設計へのフィードバックを行いたい。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、二波長発光分光を用いることで、プラズマの電子温度及び水素分子の電離度・解離度を測定する手法を確立できた。効果的な水素プラズマの発生条件を探る点に関しては、当初の計画では、パルス電界を印加することを想定していたが、電源条件から厳しいことがわかった。そこでマイクロ波による誘電加熱(熱的作用)と、電界によるプラズマ生成(非熱的作用)の効果を切り分けられるようガス圧を変化させることで、温度条件は等しいうえでプラズマ温度・頻度が異なる環境を作りだすことを試みた。しかし、期待に反してガス圧を変えても反応効率に大きな差は見られなかった。これは気体分子数密度も変化してしまったことによるものと考えられる。次年度は、あらたに溶液の冷却システムを追加したうえで、マイクロ波出力を変化させることで、温度条件が等しい条件下での測定を行う予定であり、研究の遂行に支障はない。
次年度(平成27年度)は、あらたに溶液の冷却システムを追加したうえで、マイクロ波出力を変化させることで、温度条件が等しい条件下での測定を行う。また、マイクロ波プラズマのサイズを拡散方程式にもとづき検討したところ、100ミクロン程度以上であることがわかった。触媒(パラジウム担持活性炭)の形状を100ミクロン程度の空孔を持つものに制御したうえで、触媒構造がPCBの反応効率に与える影響の検証も併せて行う予定である。
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