真空中の極性反転時の電界制御を目指して、本申請課題では、(1)浮遊電位電極を含む電極系における直流電界下の帯電分布形成、(2)極性反転時の沿面電荷挙動の解明,(3)極性反転時における沿面電荷挙動制御の可能性の検討の3項目について明らかにすることを目指す。 平成26年度では、上記(1)について検討を行った。絶縁物背後の静電プローブおよびボルテージホロワ回路により直流の,静電プローブに誘導される電流の測定によりインパルス電圧重畳時の,それぞれの状況において帯電分布の変化を測定できた。平成27年度では、上記(1)については浮遊電極の帯電電位計測手法の検討を行い、容器を含めた電極系各所の静電容量を事前に測定すれば、静電プローブと容量分圧回路にて測定できることを確認できた。上記(2)については、極性反転前後の帯電量変化を、静電プローブおよびボルテージホロワ回路により測定した。インパルス電圧印加時の陰極を起点とするフラッシオーバとは異なり、沿面上の帯電電荷の挙動のみで沿面上の放電が起こることが、帯電電荷変化量と発光測定から明らかとなった。極性反転時の放電における放電電流が電極間を短絡するフラッシオーバの場合よりも小さいことや、高速ビデオカメラによる発光からの放電進展範囲の観測も、この結果を裏付けた。さらに、帯電を考慮した極性反転前後および極性反転に伴う放電後における電界解析を行った。 平成28年度においては、平成27年度に引き続いて極性反転前後の電界解析を行い、極性反転時に二次電子なだれが起こりうる領域があっても、電界の向きを考慮して、その際の陰極等からの電子供給が無ければ、全路破壊には至らないと推定できた。これは上記(3)に対して、二次電子放出係数が1を超える領域において、電子なだれの向きと一次電子供給源の有無で沿面放電の可能性を検討できることを示唆している。
|