研究課題/領域番号 |
26630112
|
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
滝川 浩史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90226952)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | トライボマテリアル / ダイヤモンドライクカーボン膜 / フィルタードアーク蒸着 / 中間層 / 軸受け / 摺動性 / 耐摩耗性 / フライホイール |
研究実績の概要 |
蓄電デバイスとしてリチウムイオン電池などの化学電池が代表的であるが、回転エネルギーとして蓄積するフライホイールバッテリも考案されている。本研究では、家庭用やスマートグリッド用小型フライホイールバッテリの実現に向け、主要部品の一つである軸受に関し、超低摩擦摺動膜であるテトラヘドラルアモルファスカーボン(以下、ta-C)膜を用いたスーパートライボ軸受けの利用可能性を実験的および学術的に探ることを目的とした。 本年度では、特に軸受けへのコーティングを目的としたta-Cコーティングと材料構造の検討について実験的に集中して取り組んだ。本研究では、T字状フィルタードアーク蒸着装置を用いることによって、ドロップレット(蒸発源から放出される微粒子)フリーな高品質ta-C膜を成膜した。ta-C膜は、成膜条件により膜質が大きく変化する。バイアス電圧等のプロセス制御により膜密度等が異なるta-C膜を作製し、膜の機械的特性変化を比較した。また、ta-Cコーティングでは、母材とta-C膜との間に中間層を形成する。本年度の研究成果により、中間層またはta-C膜の下地材を変化させることで、ta-Cコーティングによる機械的特性のさらなる向上が見出された。今後は、ta-Cコーティングによる機械的特性の向上、および軸受けへの成膜に適した中間層・下地材の検討・比較を実験的にさらに進める。加えて、中間層・下地材がコーティング膜特性に与える影響に対して、学術的な検討を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軸受けへの成膜に向けたta-C成膜条件と材料構造に関する最適化を進めた。T字状フィルタードアーク蒸着装置を用いて、各種母材へta-Cコーティングを試みた。ta-Cコーティングにおいて、母材との密着性は大きな課題であり、密着性向上にはta-C膜の成膜条件とともに中間層またはta-C下地材の検討を行う必要があった。本年度の研究により、軸受けへの成膜にも適用可能なta-C成膜条件を見出した。さらに、中間層・下地材の比較・検討により、中間層・下地材が膜の密着性のみならず、膜コーティング全体の機械的特性に大きな影響を与えることを確認した。特に耐摩耗性・摺動性に対し、特性の向上が見られた。コーティング膜の機械的強度は、軸受けの保護膜として特に重要な特性であり、本申請時に期待していた以上の成果である。 ta-Cコーティングした軸受けに対する諸特性評価を行うための試験機試作に向けた検討・設計を行った。従来の摩擦・摩耗試験に用いられるピンオンディスク型試験機へ軸受けを形成することで、ta-Cコーティングした軸受けの性能評価を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
新たに中間層および下地材により、ta-Cコーティングの機械的特性向上が確認できたことから、次年度もさらに中間層・下地材の検討を行っていく予定である。特に機械的特性の向上が見込まれることから、ta-Cコーティングの軸受け適用時に期待される性能向上についてさらなる検討と実験的確認が必要である。また、中間層・下地材がコーティング膜特性に与える影響に対して、学術的知見を加える。 ta-Cコーティングした軸受けの諸特性評価を行うための試験機を試作する。従来の摩擦・摩耗試験に用いるピンオンディスク型試験機へ軸受けを形成し、T字状フィルタードアーク蒸着装置により、軸受けへta-Cを成膜する。ta-Cコーティングした軸受けに対し、摩擦・摩耗試験を実施する予定である。
|