研究課題
蓄電デバイスとして回転エネルギーで蓄積するフライホイールバッテリなどが考案されている。本研究では、家庭用やスマートグリッド用小型フライホイールバッテリの実現に向け、主要部品の一つである軸受に関し、超低摩擦摺動膜であるテトラヘドラルアモルファスカーボン(以下、ta-C)膜を用いたスーパートライボ軸受けの利用可能性を実験的および学術的に探ることを目的とした。これまでの研究により,母材/硬質中間層/ta-C膜の3層構造による著しい耐摩耗特性向上を見出した。本年度では,この3層構造を基本とし,軸受けに適した表面コーティング膜の検討を耐摩耗・摩擦試験から検討した。これまでは,非常に硬質なta-C膜を用いることで耐摩耗特性の向上を明らかにしてきたが,同時に相手材攻撃性の高さが問題となった。硬質中間層の凹凸形状が表面層であるta-C膜形状に反映され,膜表面の平坦性が失われていた。ta-Cに水素を含有したta-C:H膜を表面層とすることで,ta-C表面層より耐摩耗・摩擦試験時の相手攻撃性が緩和された。水素含有によりta-C膜が軟質化し,相手攻撃性の低減につながったと考えられる。また,著しい耐摩耗性の低下は見られず,硬質中間層を用いた特徴的な膜構造による膜全体の耐摩耗性向上が,表面層軟質化による耐摩耗性の低下を相殺したと考える。剛球の立ち上がり回転速さから摩擦特性の向上も明らかにした。本年度の研究により、ta-Cまたはta-C:Hを表面層とし硬質中間層を用いた3層構造が耐摩耗・摩擦特性を著しく向上させることが明らかとなり,相手攻撃性などのスーパートライボ軸受実現に必要なコーティング膜特性の改質・改善方法の方向性を見出すことができた。今後は、軸受けへの成膜にさらに適した表面層形成条件を探ることで,スーパートライボ軸受けの実現を可能とする表面コーティングを提案したい。
2: おおむね順調に進展している
前年に明らかにした耐摩耗コーティング構造を用いて,軸受けコーティングへの利用に適した材料の比較検討を行った。水素含有による軟質化ta-Cの表面層への適用により,実際の製品利用で重要なトライボ特性のひとつである相手攻撃性の低減を明らかにした。また,硬質中間層を用いた耐摩耗コーティング構造により,表面層軟質化によるコーティング膜全体の耐摩耗性の低下を抑制した。より実利用に近いコーティング膜の探求を行い,本研究課題の目指すスーパートライボ軸受実現のための薄膜コーティング法の確立の方向性を明らかにしつつある。
母材とta-C表面膜との間に硬質中間層を用いた3層構造が,軸受に必要なトライボ特性を著しく向上させることが明らかになった。次年度も引き続き軸受コーティングに適した成膜条件等の検討を行っていく予定である。最終年度である次年度では,これまでに得られた研究成果をまとめ,本研究課題で提案したスーパートライボ軸受実現の可能性について明らかにする予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
MRS Advances
巻: 2016 ページ: pp.1-6
10.1557/adv.2016.126
巻: 2016 ページ: pp 1 - 6
10.1557/adv.2016.49
http://www.pes.ee.tut.ac.jp/