研究課題/領域番号 |
26630115
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
大塚 信也 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60315158)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 部分放電 / 診断 / 放射電磁波 / FDTD解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、電力機器診断の最適化をもたらす革新的機器開発法を提案することであり、事故や故障のない極めて信頼性の高い賢い電力システム構築に機器レベルで貢献することである。申請者はこれまでに世界に先駆けて30GHz前後の超広帯域の放電電流波形を測定できる装置を構築し、電力機器の代表的な絶縁媒体中の放電電流波形を取得している。この波形データを入力信号として、スーパーコンピュータ等の大規模コンピュータにより変電所等の数10mの実電力設備規模で、放電放射電磁波の伝搬特性を高時間・高空間分解解析による大規模計算する。この結果に基づき、最適なセンサ仕様、機器構成、およびセンサと機器の配置を明らかにすることを目指す。また、この一連の検討方法を機器開発法として一般化し、将来の機器設計の標準ツールとなるよう目指す。 これまでに、スパコン計算の妥当性検証の結果を受けて、実際に実規模電力設備の特徴的な部位を抽出してモデル化を行った。このモデルに基づき大規模計算に向けた検討を実施し、入力電流波形に基づき放射される電磁波信号波形やその伝搬特性、および任意の位置での電磁界強度の時間変化、即ち電磁波波形を検討した。特に、入力電流波形として、代表的な電力機器であるGISの異物条件を考慮したバリエーションを準備し、異物条件による電流波形ならびに放射電磁波特性に相違があることを明らかにした。また、GISなどのガス中放電源でなく電力ケーブル劣化モデルに対する計算も実施した。これらにより、各種入力電流波形と測定位置での電磁波波形との関係を検討した。実験結果とのよい一致を示す結果が得られていることから解析結果の有効性を確認した。これにより、診断技術開発のための新たな方法論を提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析対象機器を当初の目的の変電所密閉機器から、2016年10月末に都内に大停電をもたらした電力ケーブルに適用を拡大して、電力ケーブル劣化モデルにおける部分放電電流波形を超広帯域計測によりデータ取得し、特徴量を検討した。劣化部を含む電力ケーブルをモデル化し、特徴量を検討した電流波形を用いてモデル解析した。また、この結果を検証するための解析実験を行ない、本研究が提案している診断技術開発の方法論の検証ができた。このように、より現実ニーズに即した研究を着実に実施できており、概ね順調に研究は実施できた。現在、この成果を電気学会の論文誌に投稿する準備を行っており、論文発表を通して本研究の成果を周知、公開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により、電力機器の各種絶縁物の劣化状態に対応する電流波形を超広帯域測定により取得していると、大きさや形状、構造の異なる個々の電力機器にカスタマイズされた診断技術の開発が原理的に可能となることを実験ならびに解析により示すことができた。また、診断技術の新しい開発方法の方法論を提示、検証できたため、これから開発される新たな電力機器の設計に反映させる取り組みを行いたい。 このような観点から、各種絶縁物の劣化状態に対応する電流波形のデータベースを構築、充実させる基礎研究を進めたい。また、この新たな方法論を用いた機器開発をメーカーの協力の元で実施した。実規模機器での問題点や課題、現場ノイズ環境との関係など総合的に検証したい。このような取り組みを通して本手法の標準化を目指したい。 他方、機器構造だけではなく、ニーズに合わせた検出センサの最適化に関する研究も展開したい。最近ではIoTなど多数のセンサ群でのビッグデータ解析なども精力的に行われていることから、機器単体の最適化だけでなく、変電所レベルや電力会社の系統における制御運用の地域レベルなど、多地点、広範囲の取得データに基づく診断技術開発への展開を指向した研究を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助金事業期間延長を申請して承認されているように、解析対象を2016年の10月末に都内に大停電をもたらした電力ケーブルに適用を拡大し、モデル化および解析実験を行なった成果を電気学会の論文誌に投稿するためのまとめのため計画を延長して実施しているため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文内容に関しての専門家との意見交換のための旅費ならびに電気学会論文誌への論文投稿費として使用する予定。
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