研究課題/領域番号 |
26630116
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石山 敦士 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00130865)
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研究分担者 |
植田 浩史 大阪大学, 核物理研究センター, 助教 (10367039)
野口 聡 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30314735)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 加速器 / 超伝導材料 / 電気機器 / 廃棄物処理 / 量子ビーム |
研究実績の概要 |
原子力分野の最重要課題の1つである放射性廃棄物の処理を可能とする技術の一つとして「加速器駆動システム」がある。研究代表者らは、これを実現する30MW級(1GeV×30mA)の出力、30%以上の加速効率の大出力・高効率陽子加速器「次世代超伝導サイクロトロン:Next Generation Superconducting Cyclotron (以下、「NSC」と略記)」の開発を目指すこととした。2014年度は、主に研究代表者らが提案した新しいサイクロトロン方式を採用した超伝導陽子加速器の主要素である超伝導コイルシステムの実規模設計を試みた。以下、その主な成果をまとめる。 1) 実規模システムの基本設計:NSC用高温超伝導コイルシステムは、空心の円形スプリットコイル(等時性磁場発生)と非円形スパイラルセクターコイル(ビーム集束用AVF: Azimuthally Varying Field発生)、および入射・引出用コイルなどから構成される。まず、目標出力30MWを達成するための等時性磁場とAVFを求めた。今回は、6T(引出半径0.94m)と10T(引出半径0.564m)として算出した。この要求仕様のもと、コイル形状と運転電流を設計変数とし、線材(Y系線材とBi2223補強線材の使用を想定)の超伝導特性および機械強度を制約条件として、使用線材量を最少化する設計(シミュレーテッドアニーリング法を適用)を試みた。ここで高機械強度・小型化のため、研究代表者らが提案した“Yoroi-coil”構造の採用を想定した。 2) 入射・引出用コイルの基本設計:大電流化に伴う空間電荷効果を考慮の上、入射ビームが加速平面内のビーム軌道に整合するように、ビームの入射位置・角度、入射機器の最適化を進めた。また、ビーム加速軌道の安定性評価と加速位相制御法、およびビーム引出方式の最適化と引出機器の設計を順次進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りほぼ順調に研究が進んでいるが、2014年度(初年度)は、本研究課題の主題である30MW級サイクロトロン用コイルシステムの設計研究の成果の発信は行わなかった。本研究の目標は、現存する加速器の最大出力より1桁以上大きい30MW級の巨大加速器を、高温超伝導技術を活用して実現しようとすることであり、極めてチャレンジングな目標であると考えている。そして本研究課題は、現状の超伝導技術レベルを前提とした30MW級サイクロトロン用超伝導コイルシステムの設計研究であり、ビームの入射・加速・引出すべてを行うことのできるコイルシステムの設計可能性を検証していくことを目的としている。従って、成果概要に記したように、計画通り順調に設計研究を進めているが、まだ、論文としてまとまった成果を発信する段階に至っていない。次年度(最終年度)末までには、成果をまとめ、発信していきたいと考える。なお、研究代表者らは、本研究の対象である加速器用の高温超伝導コイル開発のための基盤技術(特に大型化に伴うコイルの高機械強度化)に関する研究を進めており、それらの成果については学会発表を行った。本研究課題の主題である大出力加速器の設計研究にそれらの成果・知見(現状の技術レベル)を順次取り入れていくことになる。
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今後の研究の推進方策 |
1) 高機械強度設計(応力・変形解析):Yoroi-coil構造を有効活用して、強大な電磁応力に打ち勝つ高機械強度コイルシステムおよび支持構造設計を行う。必要に応じて、コイル設計最適化にフィードバックする。 2) 熱設計(通電・伝熱特性解析):冷凍機伝導冷却方式を想定し、通電・伝熱特性解析(自作計算機プログラムを活用)に基づいて大型超伝導コイルシステムの熱設計を行い、成立性の検証を行う。 3) 実現性の検証・開発指針の提示:全コイルが組み合わされた時のコイル間電磁応力評価やビーム入射・引出系の設計結果を制約条件にフィードバックする。この際、当初の計画になかった遮蔽電流磁場低減を考慮したコイルシステムの設計やコイル励磁法も出来得る限りフィードバックできるようにする。そして最終的に実現可能な超伝導コイルシステムの設計を目指しながら、現状技術の到達点評価を行うとともに、今後の研究開発課題解決の指針を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究補助が予定より効率的に行えたため、謝金が予定額を下回った。また分担者との打ち合わせが予定より少なくて済んだため、旅費に残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者(北海道大学および大阪大学)との打ち合わせをより密に行うために使用する予定である。
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