本研究課題では、電気磁気効果に由来する電界誘導型スピンデバイスの実用化に向けて不可欠である、局所領域でのスピン高周波電界応答を評価できる新規「高周波電界イメージング計測技術」を開発する。本年度は昨年度に引き続き電界検出方式の確立と、コプレーナ伝送線路(CPW)上で発生する電界の検出を行った。検出方式の確立に関しては、搬送波信号に検出プローブの機械共振周波数に近い変調信号を入力した振幅変調方式および、二台の高周波信号発生器を用いて周波数がわずかに異なる二つの正弦波を入力してプローブにより検出するうなり方式について、それらの原理検証(基本動作の確認および、プローブの振幅の原因となるほ原理式の導出)に基づいて、両方式の計測のセットアップの簡便性を比較し、本研究課題では振幅変調方式を採用した。検出方式の確立により得られた知見をもとにして、CPW上で発生する高周波電界の検出に関しては、振幅変調方式を用いて1~2GHz帯においてCPW上で発生する電界の断面(プローブ走査方向)分布計測を行った。検出プローブの振動振幅値が検出プローブの走査方向に対して一方方向に右肩上がりに大きくなり、高周波電界分布が本検出方式では走査方向に依存していることを表している。この結果は検出プローブが誘電体であるSiからなるため、プローブ全体とCPWとが平行平板型コンデンサの電極として振る舞い、走査方向によってプローブ面積が変化することによるものである。また、この結果は伝送線路上で発生する電界分布をより正確に計測するためには、プローブ材料をSiから他の誘電材料に変えることや一部を絶縁性を高めることが必要であることを示唆している。したがって、振幅変調方式方式を、スピン材料の電界イメージング計測を応用することが可能である。
|