研究実績の概要 |
前年度、合成したBenzocunnoline誘導体の精製を行い、電気特性の評価を進めたが、信頼にたる特性を得ることが困難であった。 そこで、Benzocinoline誘導体に見いだされた広い温度領域で発現したSmC相の結果を参考に、Phenanthrenedioneをコア部にもつ同様な誘導体を合成し、その相転移挙動をDSC,X線回折、偏光顕微鏡による組織観察によって調べ、SmC相の発現を確認した。この結果をもとに、光学活性フェニルアルコキシ基を置換した誘導体を合成し、三角波法による残留分極の測定と偏光顕微鏡下における電場によるスイッチング現象の観測から、SmC*相による強誘電性が発現することを確認した。この物質の精製した試料を用いて、液晶セルを利用した試料の電流-電圧測定を行い、105V/cmを超える電界領域で10-7A/cm2を超える高い電流を観測した。また、同様な構造を持つラセミ体を合成し、その精製した試料を用いて同様な測定を行った結果、やはり、高い電流を観測した。これらの結果から、当初、強誘電性に固有の現象と考えられた本異常電流注入効果は大きな双極子を持つ分子の配向による効果と考える方が妥当であるという、前年度の結果を支持するものであった。
|