研究課題
本研究は、グラフェンにフッ素を修飾した新規2次元材料であるダイヤモンドシートを創製し、膜の特異な物性を解明し、低消費電力デバイス、特にスピントロニクスへ応用することを目的とする。グラフェンは高いキャリア移動度を持ち、スピン拡散長がながくスピン流輸送に優れているため低電力デバイスの実現が期待されているが、スピンの生成や制御が困難という欠点がある。一方、フッ化グラフェンは、スピン軌道相互作用が大きくなるためスピン制御のデバイスの実現が期待できるできる可能性がある。26年度の結果を以下に示す。(1)グラフェンにフッ素原子を低ダメージで修飾する技術を構築した。(2)ゲート絶縁膜にイオン液体を用いたトランジスタを試作し、動作を検証した。(3) グラフェンにフッ素を化学修飾したフッ化グラフェンは、スピン軌道相互作用が大きくなるためスピン制御のデバイスの実現が期待できる。以下の結果が得られた。・フッ化グラフェンのスピンホール効果検証用のデバイスを作製し、スピンホール効果の存在や制御性を示唆する初期的結果が得られた。・直接的な検証をするために、フッ化グラフェンにトンネルバリアを介してスピンを注入するデバイス構造を提案し、アルミナ(Al2O3)からなるトンネルバリア膜の形成を行った。この結果、原子層堆積法(ALD)を用いて厚さ約4nmのアルミナ膜の形成することができた。電気的な測定を行ったところ、トンネルバリアとして作用していることがわかり、アルミナ膜の膜厚を制御することでそれぞれの特性の制御が可能だと考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
フッ化グラフェンのスピンホール効果の存在や制御性を示唆する成果が得られ、超低消費電力化が期待できるスピンデバイスの実現を示すことができており、当初の計画以上に進展している。
フッ化グラフェン膜を適用し、超低消費電力化が期待できるスピンデバイスを提案する。現在フッ化グラフェンを用いることで、スピン・軌道相互作用が増強することを確認している。スピンバルブデバイスを実現するために、強磁性体あるいはホイスラー合金からトンネルバリア(Al2O3)を介したスピン注入→輸送→検出を行う構造を具体化し、スピンを注入するためのデバイスの要素技術を開発する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Applied Physics Letters sAppl. Phys. Lett. 106, 013504 (2015);
巻: 106 ページ: 013504
10.1063/1.4905469
IEEE Display Technology, Vol.10 , 962 - 965 (2014)
巻: Vol.10 ページ: 962-965
10.1109/JDT.2014.2332636