研究課題/領域番号 |
26630129
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
下間 靖彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40378807)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 半導体超微細化 / 半導体物性 / 光物性 / 高性能レーザー / 廃熱利用 |
研究実績の概要 |
石英ガラス等の内部にフェムト秒レーザーを集光照射すると、その偏光方向に応じたナノ周期構造が自己組織化される。一方、単結晶シリコンの場合、偏光方向に平行にナノ周期構造が配列することをこれまでに明らかにした。また、利用したレーザー装置の最大レーザーエネルギー(200 uJ)では、内部を直接改質するには至らず、600 uJ以上の照射パルスエネルギーが必要であることがわかっている。本年度は、単結晶シリコンの内部に形成されるナノ周期構造とレーザー照射条件の関係を明らかにすることを目的に、フェムト秒ダブルパルスの遅延時間や偏光方向がナノ周期構造形成に及ぼす影響を体系的に調べた。ダブルパルスの遅延時間を変化させた結果、約40 ps を超えると構造変化領域のサイズが小さくなった。これは、第一到達パルスにより励起されたキャリアの電子温度がフォノン緩和により低下し、第二到達パルスとの相互作用が十分に起きなくなったためと考えられる。また、遅延時間を800 ps としてもサイズに大きな変化は認められず、この結果はキャリア寿命が長いことに起因すると考えられる。さらに、ナノ周期構造の形成方向は、第二到達パルスの偏光方向に依存せず、常に第一到達パルスの偏光方向と平行に形成され、石英ガラスとは異なる形成メカニズムが関与していると考えた。さらに、シリコンと同様、間接遷移型半導体であるGaPについても同様の実験を行い、ナノ周期構造が自己組織化することを確認した。今後、ナノ周期構造の電気的・熱的な物性を詳細に評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に実施予定の項目(単結晶シリコン内部のナノ周期構造がどのようなレーザー照射条件で形成可能か、他の材料への応用の指針)を明らかにした。一方、不純物(BまたはP)のドープ量が異なるシリコン基板についても同様の実験を実施したが、不純物量が少なすぎるためか、無ドープの単結晶シリコンと同様のナノ周期構造が形成されることを確認した。今後、不純物に着目するのではなく、他の間接遷移型半導体材料(GaPやSiCなど)に着目して実験を進める。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度であるため、第一に、形成したナノ周期構造の電気的・熱的な物性を詳細に評価する。評価した物性から、熱電性能を求める。次に、他の間接遷移型半導体材料についても同様の実験を行い、熱電性能を系統的に評価し、電変換材料への応用の可能性を見出す。
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