研究課題/領域番号 |
26630132
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
富田 卓朗 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (90359547)
|
研究分担者 |
岡田 達也 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20281165)
山口 誠 秋田大学, 大学院工学資源学研究科, 准教授 (90329863)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | レーザーアニール / モニタリング / SiC / 金属電極 / 合金化 |
研究実績の概要 |
シリコンカーバイド(SiC)は高い熱伝導率、絶縁破壊電界などパワーデバイスに必要とされる優れた特性を持つ。しかし、ニッケル(Ni)電極/SiC界面において形成される高いショットキー障壁が、デバイスの電気特性に悪影響を及ぼす。したがって、Ni/SiC界面でのオーミック接触形成技術が重要である。従来のオーミック接触形成技術としては、フラッシュランプを用いて1000℃程度で急熱急冷をする方法が知られているが、1000℃でのアニールによる材料の制限やデバイスへの熱損傷などの課題がある。そこで本研究では、フェムト秒レーザー照射と低温アニール処理を組み合わせた熱による損傷を低減したオーミック電極形成技術を確立することを目指している。本研究ではフェムト秒レーザーを照射と低温アニール処理を用いて作製したNi/SiC界面の物性分析をおこなった。 ラマン分光分析の結果と光学顕微鏡像を比較すると、レーザー照射個所に対応してニッケルシリサイド(Ni2Si他)の強度が強くなっているから、レーザーを照射した所にNi2Siが多く形成されており、ニッケルシリサイドの形成の促進にレーザー照射が関与していることを示している。 また、透過型電子顕微鏡観察からもすべての試料で、レーザ照射による改質(ひずみ層)がSiC内部に形成していることを確認した。アニールを行った試料ではNiがひずみ層に沿ってSiC側へ拡散している様子と、Ni/SiC界面に隣接するNi膜内にコントラストの異なる新たな層が形成されたことを確認した。また,NiのSiC側への拡散距離及び層の厚みは,温度と保持時間の増加に伴って増加する傾向を示した。レーザが照射されていない領域との比較から、フェムト秒レーザ照射に伴うSiC内への欠陥導入により、Ni拡散を促進したことは明らかである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は従来ナノ秒レーザーアニールによる金属/半導体界面アニールプロセスの観測を目指していたが、研究開始早々に現有の装置で試しに行ったフェムト秒レーザー照射に低温アニールを行うという着想が、デバイス作製上極めて有効な手段であることを見出した。本研究は挑戦的萌芽研究という性格を勘案し、共同研究者らと合議の上、応用上の有用性も高いフェムト秒レーザー照射と低温アニールを組み合わせる研究を優先して行うこととした。このような観点から、本研究は挑戦的萌芽研究として当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度の欄で記述したとおり、フェムト秒レーザー照射と低温アニールを組み合わせる研究が大きな成果を挙げているので、この研究を来年度も遂行していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
既に研究成果のところで述べたとおり、フェムト秒レーザー照射と低温アニールを用いた金属・半導体界面のアニールが大幅に進んだため、高額な装置の購入を後回しにして、当該研究の遂行に注力したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度ではフェムト秒レーザー照射と低温アニールを用いた金属・半導体界面のアニールに対してその場観察を行う予定であり、そのための装置購入を計画している。
|