研究課題
Ni-Si-O三元系ポテンシャルを開発し、酸化膜で覆われたナノワイヤ型Si結晶中のNi拡散シミュレーションを実現した。また、シミュレーションの比較対象となる実験データを取得するため、Siナノワイヤのシリサイド化実験も実施した。その結果、ナノワイヤを覆う酸化膜によって誘起されるSi結晶格子の乱れが、Niシリサイド化を増速させるという物理的描像を得るに至った。まず、シミュレーションに関する項目では、研究代表者が開発したSi-O系用ポテンシャルにNi-SiおよびNi-O間相互作用項を追加し、Si結晶中のNi原子の拡散障壁を再現するようパラメータを決定して、Ni-Si-O三元系ポテンシャルを完成させた。このポテンシャルを用いてSi結晶中のNi原子の拡散過程の分子動力学シミュレーションを実施したところ、Si結晶が圧縮ストレスを帯びるとNi拡散が抑制され、引張応力を帯びると逆にNi拡散速度が増大することが判明した。また、Si結晶の乱れによってもNi拡散速度が増大することも判明した。Siナノワイヤのシリサイド化実験では、20nm幅のSiワイヤを再現性良く作製する技術を確立した。作製したSiナノワイヤのNiシリサイド化速度を計測したところ、酸化後の熱処理の有無でシリサイド化速度が変化する様子が確認された。ナノワイヤ型Si結晶のラマン波数シフトを測定したところ、熱処理を施した試料で圧縮応力と結晶性の劣化が起こっていることが確認された。上記シミュレーションの結果と照らし合わせると、Si結晶の乱れがNiシリサイド化速度増大の主要因となっていると結論できる。
1: 当初の計画以上に進展している
Si結晶中のNi原子の拡散過程を再現する相互作用モデルの開発が予定より早く完了し、Si結晶格子の乱れがNiシリサイド化速度増大の要因となっているという、本研究課題で目指していた物理的描像を初年度のうちに獲得できた。比較対象となるSiナノワイヤ構造のシリサイド化実験も順調に進行しており、20nm幅のSiワイヤを再現性良く作製する技術を確立できた。
様々なSiナノワイヤ幅についてシミュレーションと実験のデータを拡充し、初年度で得た結論の妥当性をより定量的に検証していく。また、Niシリサイド化したナノワイヤのダイオード特性の評価も実施し、電気特性の観点から金属-半導体ナノコンタクトの特性を調査していく。
「用品費」に計上していた30万円を使用せずに済み、うち14万円程度を「その他」の実験施設使用料に充当したことによる差額である。
「用品費」に残金の一部(10万円)を追加計上し、計算機環境の強化に充てる。その他の残金は「その他」で使用し、実験施設使用料に充てる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 53 ページ: 085201-1,-4
10.7567/JJAP.53.085201