研究課題
前年度に実施した分子動力学シミュレーションで、酸化膜との界面近傍における乱れたSi結晶格子の部分でNiシリサイド化が促進されるという微視的描像が得られ、これがナノワイヤ内部のNi化反応が均一に進まない原因と推論した。そこで、Siナノワイヤ全体にArイオンを照射して結晶格子を一旦乱したのち、熱処理により再び結晶構造を回復させて酸化膜の影響を除去するプロセスを着想し、その効果を実験で検証した。その結果、期待通りナノワイヤ内部のNi化反応が均一に進むことを見出した。当該年度の実験に用いたSiナノワイヤ試料は、面方位(100)のp型Silicon-On-Insulator(SOI)基板上に電子線リソグラフィおよびプラズマエッチングで形成したものである。ナノワイヤの方向は<110>とした。Ni化反応後のナノワイヤ試料のNiシリサイド/Si界面部分を集束イオンビームで削り出し、断面透過型電子顕微鏡観察およびエネルギー分散型X線解析を用いて組成分布を詳細に分析した。Arイオン照射を行わないナノワイヤ試料では矩形断面内の上面端部でNiの拡散が優先的に起こることが確認された。一方、Arイオン照射後結晶回復アニールを施した試料では、断面内で均一にNiSi2領域が形成されることが確認された。これにより、Siナノワイヤの金属コンタクト形成プロセスの制御性が格段に向上し、ナノスケールのショットキー障壁トンネルトランジスタの作製とその動作実証、トップゲート構造のナノワイヤ型トランジスタの作製と動作に成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
分子動力学シミュレーションに基づいてSiナノワイヤ中のNi化反応を均一に起こす方法を見出すことができ、計画立案時の第一の目標が達成された。新たに開発したプロセスでナノワイヤトランジスタ製作およびその動作実証を達成したことから、当初の計画以上に進展したと判断できる。
ナノワイヤ内部でのNi化反応速度の均一化には成功したが、ナノワイヤトランジスタの電気特性には改善の余地がある。酸化膜とSiの界面の質を高めるプロセスの開発に引き続き取り組む。
共同実験施設使用料金の年度末の請求額が見込みより少なく、19,926円の残金が生じた。
次年度の実験消耗品の購入、実験施設利用料に充当する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 7件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 55 ページ: 04ED07 1-5
10.7567/JJAP.55.04ED07