研究実績の概要 |
本研究では、テラヘルツ時間領域分光エリプソメトリを用いた他入射角・偏光分光測定による導電性高分子poly(3,4 ethylenedioxythiophene):poly(styrensulfonate)(PEDOT:PSS)薄膜の異方的キャリア伝導解析を行う。PEDOT:PSSは透明電極や熱電素子、有機ELや有機太陽電池などのさまざまな応用が期待されているが、その構造に起因する違法的キャリア伝導機構は十分解明されていない。本研究によってキャリア伝導機構を解明しその輸送特性を非破壊評価することはこれらのデバイスの性能向上・長寿命化を図る上でも重要である。
H28年度は、構築した他入射THz分光エリプソメトリ装置を用いて、高抵抗Si基板上にPEDOT:PSS水溶液からスピンコーティング法によって成膜したPEDOT:PSS試料の測定を行った。PEDOT:PSS水溶液にはエチレングリコールを添加することにより、面内導電率が100 S/cmを超える金属的にあ試料を用いた。面内方向(xy方向)と垂直方向(z方向)のTHz帯伝導度スペクトルを測定し、キャリア輸送特性の解析を行った。得られたTHz帯伝導度スペクトルの周波数依存性を解析することにより、面内方向は乱れた金属的なキャリア伝導特性を示すのに対して、垂直方向は局在化した準位間をホッピングする伝導特性を示すことが明らかになった。これは面内についてPEDOT結晶の凝集により金属的なキャリア伝導経路が形成されるのに対して、面間方向では凝集がすすまず伝導経路が形成されていないことを示唆していると考えれる。
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