研究課題/領域番号 |
26630143
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤掛 英夫 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20643331)
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研究分担者 |
石鍋 隆宏 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30361132)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フレキシブルディスプレイ / 液晶ディスプレイ / 液晶・高分子複合膜 / 光重合相分離 / 配向制御 |
研究実績の概要 |
今後の情報化社会では、あらゆる生活環境において必要な情報が的確に提供されるように、多様な構造物に装着可能な超柔軟ディスプレイが求められる。大画面化や動作の安定性が期待されるフレキシブル液晶ディスプレイは、現在、プラスチック基板を用いて開発が進められているが、2枚の基板を用いるため柔軟化には限界がある。そこで本研究では、分子配向が制御された極薄の高分子・液晶複合膜を作製し、高コントラスト表示を可能にする基板レスデバイス構造とその作製技術を確立することを目指す。26年度は、配向させたモノマーと液晶の混合液に紫外線のパターン露光を施すことにより、分子配向を維持した状態で液晶と高分子を分離することを試みた。 重合時に分子ネットワークを構成せず柔軟構造が期待できる単官能液晶性モノマーと、ネマチック液晶を混合した溶液を、摩擦処理方向を直交させた配向膜付き基板間に注入し、液晶セルを構成した。この液晶セルに、直交格子状の光学マスクを用いて紫外線のパターン露光を行うことにより、露光部以外への液晶の析出を促進した。試作した複合膜を偏光顕微鏡を用いて観察した結果、液晶と高分子の配向が90°ねじれながら分離していることが確認された。また分離構造を観察した結果、作製時の温度を高くすると、液状ポリマーの流動性が高まり液晶の凝集が促進されるため、液晶滴のサイズが大きくなることがわかった(最大数十μm径)。また、紫外線強度が大きい場合、液晶滴が凝集する前に硬化が進むため微小な液晶滴が分散されることがわかった。さらに、本実験で作製した液晶セルに電圧を印加したところ、ツイストネマチック液晶デバイスに特有の光変調特性が確認できた。 これらの実験から、配向膜により分子配向が制御された液晶滴を高分子中に分散できることが明らかになった。これらの知見は、基板レス液晶ディスプレイを実現する上で有益な設計指針となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の目標は、分子配向を維持した液晶・高分子複合膜を得るための材料指針と作製技術を構築することである。90°ねじれた分子配向の混合液に格子状の紫外線パターンで露光を行った結果、モノマーの高分子化により液晶成分を分離でき、配向を維持した状態で液晶粒を高分子中に分散できた。高分子内に形成された液晶滴の中でも、サイズが小さなものは高分子内に封じられた構造となった。これらの実験結果により、おおむね目標が達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、高分子の不十分な重合状態と液晶成分の含有により、高分子が機械的に脆弱で複合膜を基板から剥離するには至らなかった。そのため27年度は、複合膜が剥離工程に耐えられるように、高分子の分子構造を再検討するとともに、紫外線露光用マスクの格子ピッチを小さくすることにより、重合を促進して複合膜の強度を高める予定である。また、液晶の析出量を増やすため、高分子組成の調整も合わせて行う。これらの実験を通して、複合膜を基板から剥離し、複合膜表面に透明な有機導電膜を塗布することで、電圧による光変調動作の確認に至る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、26年度の作製実験を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度使用額は、有機透明電極、偏光板、表面保護用コート材料の購入に使用する予定である。それらの材料で、基板から剥離させた液晶・高分子複合膜を覆うことより、基板レス液晶ディスプレイの研究を効率的に進める。
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