研究実績の概要 |
体内埋め込み型の電子機器を実現する上での技術課題は「小型化」「長期動作(10年以上)」「無線化」の3 点である。これら3つの実現を阻む最大の要因が電源供給である。そこで、本研究では、3つの課題を一挙に実現する技術として、人間の筋電からのエネルギーハーベスティング(EH)システムの提案と実証を行う。
2年目は以下の研究を行った。(1)1年目の研究で問題となった、筋電とエネルギーハーベスティング回路のインピーダンスにミスマッチがある問題を解決するために、等価回路を用いてシミュレーションを行った。(2)その結果、腕に100Hのインダクターをつけ、共振により筋電を増幅した後で80段のチャージポンプに入力することで、出力1Vを達成できるというシミュレーション結果を得た。(3)100Hインダクターと80段チャージポンプを実装して、測定を行ったが、出力1Vは達成できなかった。筋電の等価回路が不完全であることが原因であると考えられる。
本研究に関して、新展開があった。筋電からのエネルギーハーベスティングの研究遂行過程において、電源コード外皮の漏れ電界からエネルギーハーベスティングできることを発見した。この発見を応用して、ビルエネルギー管理システム(BEMS)のセンサーノード向けに、新しい電源コード外皮からのエネルギーハーベスティングを提案した。提案手法では、2芯電源コードの外皮に電極を2つ取り付けて電極と芯線を容量性結合させ、芯線からの漏れ電界エネルギーがハーベストされる。提案手法は、従来手法の問題点である電源コード内部の電流や外部グラウンドが不要である。電極の長さ20cm、電源AC100V, 50Hzのとき、3-4V、1.4uWの出力が得られた。提案手法によって250秒間隔で無線センサーノードを駆動し、温度と照度を測定し、データを無線で送信することに成功した。
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