創薬ターゲットの中の主要な膜タンパク質の1つであるイオンチャネルに対して効果的な薬剤スクリーング手法を開発するための要素技術開発のために、CCDイオンイメージングセンサ(CCD-IIS)上への人工脂質二重膜形成とイオン応答計測を行った。平成26年度はCCD-IIS表面の微細構造観察と、その結果をふまえての平面脂質二重膜の形成方法の最適化を行い、概ね順調に推移した。平成27年度はこれらの結果に基づいて、K+イオン感応膜としてイオノフォア含有PVC膜で被覆したCCD-IIS素子上で、K+濃度の異なる緩衝液を交換して時間応答を調べることにより、平面脂質膜によるイオン遮蔽効果を検証した。平面脂質二重膜形成前のCCD-IIS上では性能通りの時間応答が得られ、溶液交換開始後5秒以内に濃度変化が完了した。ベシクル融合法による平面脂質二重膜形成後は、多くの画素において溶液交換から濃度変化に遅延が見られ、半減期で約10秒、90%以上の濃度変化到達までに30秒程度を要した。画素上を被覆した脂質二重膜によるイオン遮蔽が起きていることが示唆された。一方、平面脂質二重膜による被覆が確認された画素については、同じK+濃度でも被覆前と比べてCCD-IISの出力電位が低下した。センサ面直上に絶縁膜の層が形成されたことによりセンシングエリア直下の電気容量が低下したことによると考えられる。画素間で濃度変化に対する時間応答および脂質膜形成による出力電位低下のばらつきが大きかった事から、多くの画素を高絶縁性の脂質二重膜で被覆するために、GUV形成の効率化およびフィルタリングによるサイズ選別を行った。本研究課題によってCCD-IIS上への人工脂質二重膜形成およびイオン応答計測に関しての基盤となる基本技術と計測手法を開発することができた。
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