研究課題/領域番号 |
26630159
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鎌倉 良成 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70294022)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イメージセンサ / デバイスシミュレーション / 超高速撮像 / モンテカルロ法 / アバランシェ増幅 |
研究実績の概要 |
アバランシェ増倍効果による信号電子の増倍を超高速撮像素子に応用することを目標に、裏面照射(BSI)型CCDの電荷収集過程に関する数値解析を行った。シミュレーション方法としては、電子1つ1つの挙動を追跡することのできるモンテカルロ法を採用し、電荷収集層に設けた高電界部を通過する信号電子のアバランシェ増倍過程を詳細に調べた。 本研究では、特にSiの現実的なエネルギーバンド構造を反映するフルバンド解析を行うことでインパクトイオン化等、高電界輸送に固有の効果を高精度にシミュレーションすることを図った。ただし、2014年度は簡単のため、正孔を電子の逆符号の粒子として取り扱い、物理モデル(エネルギーバンド構造や散乱確率)は電子と同一のものを使用した。シミュレーション系としては、BSI型CCD内の一部を切り出した簡易的な構造を考え、系中央部に設置した高電界領域(キャリア増倍層)を通過させることで、アバランシェ増倍を生起させた。 シミュレーションを行った結果、増倍層中の印加電界とともに高いキャリア増倍率が得られるものの、同時に到達時間ばらつきも増えてしまうことが分かった。増倍層幅を短くすることでこの特性は今回の目標に有利な方向(すなわち増倍率:大、時間ばらつき:小)へとシフトするが、それも幅100 nmまでで、それ以下に幅を縮小しても特性改善は得られなかった。 キャリア増倍によって到達時間ばらつきが増えるメカニズムとしては、インパクトイオン化のため発生した二次キャリアが逆方向に加速され再度インパクトイオン化を起こす、といった往復運動の効果が考えられる。したがって、インパクトイオン化の発生する領域幅と到達時間ばらつきの間には相関があり、非局所輸送領域の幅(~50 nm)と同程度まで増倍層幅を縮小した場合には、それ以上のばらつき抑制効果は得られないものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子法に基づく超高速イメージセンサ動作解析用モンテカルロシミュレータのプロトタイプが完成した。さらに、それを用いて予備的なシミュレーション解析を実施し、光電子収集に要する統計的な時間ばらつきの評価を行った。これにより当初計画していたシミュレーションのフレームワークはほぼ完成したと言える。今後物理モデルの高精度化とより現実に近いシミュレーションデバイス構造の構築を行うことで、本研究の目的である究極の撮像限界の評価が可能となると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アバランシェ増倍効果を正確にシミュレーションするため、シリコン中の正孔の輸送モデルを取込む必要があるが、第一原理計算などの援用を活用することで、早期に達成可能と考えている。基礎的な実験データとの比較を行った後、キャリア増倍効果を得るための具体的な撮像素子構造を策定し、その効果をシミュレーション上でデモンストレーションする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
撮像素子設計専用のデバイスシミュレータのライセンスを、2014年度は貸与という形で導入することができたため、予算を節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
撮像素子設計専用のデバイスシミュレータのライセンス購入を行う。 また、研究成果を積極的に外部発表するための費用として、海外出張旅費や論文投稿料などに当予算を充てる予定である。
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