研究課題
シリコン裏面照射型Charge Coupled Device (CCD)を用いた超高速撮像の速度限界を見極めるため、シミュレーションによる電子輸送解析を行った。この素子は、シリコンへの光照射によって発生した光電荷を、表面側に設けたコレクションゲート部にまで収集するような原理となっている。その際、電子は空乏層電界による加速を受けながら走行するのだが、結晶中のフォノン散乱などの影響によって各々の電子の走行時間の間には、必ずばらつきが生じる。そしてこれが、フレームレートの高速化限界を決める根源的な要因となることが予想されている。今回は、10億枚/秒を目標とする次世代超高速撮像素子(マルチコレクションゲート型)を想定した上で、その電子収集部に着目したシミュレーション系を設定し、内部の電子挙動をフルバンドモンテカルロ法により追跡した。散乱機構としてはフォノン散乱を考慮し、素子裏面で発生した光電子が一様固定電界により表面へと集められる構造を考えた。さらに、素子に印加する電界、素子の厚さ、入射する光の波長を様々に変化させ電子走行シミュレーションを行ったところ、得られた結果を取り扱いやすい解析式(走行時間ばらつきの標準偏差を素子構造パラメータで表現)の形にまとめることができた。それを利用することで、実現可能な限界フレームレートを予測したところ、撮像速度は入射光の波長に大きく依存すること、特に波長の長い赤色光については、高電子発生位置のばらつきが大きく、上記目標の達成が困難となることが分かった。これを回避するためには、カラーフィルターで赤色光をカットするなどの対策が必要であると考えられる。
すべて 2016 2015
すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)