研究課題
本研究の目的は、プラズモン共鳴効果を利用した、有機電界円偏光発光素子を試作することにある。キラル分子を被覆した金属ナノ粒子を従来の有機電界発光素子に挿入することにより、光学不活性な素子からの発光を、偏光したプラズモンの強い偏光電場により偏光・増強発光させることにある。局在偏光プラズモンとの共鳴により、偏光発光を実現する。最終年度は、前年度までに実現した、キラル有機材料からの円偏光発光検出を受けて、キラル分子によるプラズモン円偏光発光の強度及び偏光度の制御の可能性を評価した。実験はキラル分子被膜金属表面上からのトンネル電流発光分析を行い、金属上に直接キラル分子を被膜した試料、及び金属表面にAl2O3、NaCl等の絶縁層(バッファー層)を挟んだキラル分子被膜試料を比較した。その結果、キラルPTCDI分子では、バッファー層として挟んだものよりも、直接被膜表面からの発光において光学非対称性が増強することを確認した。一方、ヘリセン分子系においては、C60をバッファー層として使用したときのみ発光が起こり、分子によっては金属微粒子の絶縁被膜を検討する必要があることを示した。実用的なフレキシブルかつ安価な発光素子を実現するための、グラフェン電極の作製を試みた。フレーク状の酸化グラフェンをシート化しさらに加熱還元することによって得られた還元グラフェンシートをラマン散乱分光、XPS及び局所導電性計測により評価を行った。その結果、酸化グラフェンを700℃で熱還元した還元グラフェンでは、ラマン分光では酸化グラフェンの性質を持ちつつも、導電性が4桁程度向上した(1~102 S/cm)。局所伝導評価では、フレーク間抵抗が全体の抵抗値を支配していることが分かり、実デバイスでは、できるだけドメインの少ない、大面積グラフェンシートが必要であるこという知見を得た。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 12件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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