研究課題
研究に用いる試料について、昨年度に引き続き再度の変更を行った。研究計画であげた局在準位への電気的アクセス手法として研究計画で上げたゲートリーク電流測定に変わり、昨年度より短微細MOSトランジスタ の量子ドット的伝導を用いた。この手法は量子ドット電気伝道との類似性がより高く、量子ドット物理をより直接的に応用することが可能になったが、実験は1ケルビン程度の低温に限られ、研究目的であげたより高温での素子動作は未達成であった。そこでMOSトランジスタにかわり、トンネル電界効果トランジスタ(TFET)に研究対象をシフトした。TFETはゲート変調可能はPIN構造であり、シリコンのバンドギャップ深くのダングリングボンド欠陥を介した量子ドット電気伝導が可能である。この素子により200Kを超える温度での量子ドット電気伝導の観測に成功した。これにより近い将来に研究目的であげた室温での素子動作を達成できる見込みがでてきた。上記変更に従い、研究計画時には1)理研ナノサイエンス棟クリーンルームで作製するMOSダイオード、および2)半導体企業の基礎研究所から供与されるMOSトランジスタ、の両者を想定していたが、昨年度より共同研究先の東芝研究開発センターより高品質な微細MOSトランジスタの研究を行った。今年度は新たな共同研究先として産総研ナノエレクトロニクス部門より供給される微細TFET素子に注力して研究をおこなった。研究計画であげた核スピンの電気的制御は未達成である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は低温ではあるもののMOSFET構造において単一ダングリングボンド欠陥準位の電気検出磁気共鳴に成功した。今年度はTFET素子により200Kを超える温度で量子ドット的電気伝導が観測できた。この素子で室温の量子ドット的電導が実現する可能性は高く、2重ドット構造が得られれば目標である室温での電気検出磁気共鳴に成功することになる。
上述の変更した研究計画のもと、室温での電子スピン制御を行う。ダングリングボンド欠陥周辺の核スピンの電気検出・制御を行う。
液体ヘリウム使用量が当初計画より少なくなった。
次年度の装置稼働時間を増やし、液体ヘリウム代として使用する。
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Phys. Rev. Lett.
巻: 115 ページ: 18603
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.115.186803
巻: 115 ページ: 036601
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.115.036601
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 10076
doi:10.1038/srep10076