本研究は自然界に偏在する流体,構造系などの広大域の連続パワースペクトルを有する流れ,振動から,微小な力学エネルギーを改修する技術に関する基礎研究である.従来振動に関するエネルギーハーベスティングは,線形振動子が外部励振により共振するする現象を利用するものが大半であった.本研究は,自然界に存在する波動・振動が特定周波数成分だけを含むわけではない点に着目し,広帯域に拡散したパワースペクトルからエネルギーの回収の実現を図った.特に,周波数スペクトルの広帯域のエネルギーが回収できる非線形振動子,およびその結合振動子を設計し,励振された振動スペクトルから圧電素子により電気出力に変換すると共に,オン抵抗の小さいワイドバンドギャップ半導体を適用した変換回路の検討を行っている. 本研究は,上記提案に関して,低次元の非線形振動子系に生じる振動の同期,および確率共鳴の原理に基づき,広帯域のパワースペクトルを有する振動から単一振動の共振と同じ原理でエネルギー回収ができるメカニズムが存在することを明らかにした.加えて,広帯域スペクトルの振動による励振を受けた際に,同期,確率共鳴の原理により,効率良くエネルギーを吸収する振動子の構造を検討し,設計・製作してきた.これらを複数の論文として投稿し,発表している.さらに,海外の共同研究者らと共に特許も申請し,知財の確保に努めた. 平成28年度はこれらの成果に基づき,確率共鳴の原理によるエネルギー回収の原理について,国際力学連盟の国際会議に論文投稿し,採択されて発表を行った.さらに,力学的振動だけではなく,電界等の変動を振動の変化として検出するMEMSの構造に関する検討を併せて行い,流体,構造系だけではないエネルギーハーベスティングの可能性を検討した.
|