研究課題/領域番号 |
26630178
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金井 浩 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10185895)
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研究分担者 |
石垣 泰 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50375002)
長谷川 英之 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (00344698)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超音波赤血球錯乱特性計測 / 赤血球凝集 / 赤血球膜電位 / 脂質異常症 / 代謝異常 |
研究実績の概要 |
(1)静脈内赤血球からの散乱超音波スペクトル特性の正規化の検討:超音波診断装置(中心周波数:40MHz)において,皮膚表面に近い静脈内腔へ超音波を照射し,その受信出力を1 GHzで標本化し,深さごとに周波数スペクトル特性Ps(f )を求めた。しかし,このスペクトルは,超音波トランスジューサの伝達関数等の特性が含まれるため,散乱パワーの理論特性とは異なる。そこで,背後の血管壁からの超音波の反射波などを同時に解析し,超音波トランスジューサの伝達関数等の特性Pr(f )を求め,それらの比log10{Ps(f )/Pr(f )}を求めて正規化し,その傾きから,散乱体サイズを決定した。この際に,背後の血管壁の構造が,一般には内膜と中膜外膜の3層構造になっているため,Pr(f )の特性にピークやディップが現れる。そのため,平均化を行い,平坦なスペクトル特性を得た。 (2)臨床応用可能な超音波計測システムの設計製作:上記で完成した手法を臨床的に適用し,血液凝集の医学的意義を検討するため,臨床応用可能な超音波計測システムを設計製作した。医療の現場で利用できるよう,血流の駆血の場所と駆血時間,計測システムによる効率的計測と解析を行うための一連のプロセスを検討した。さらに,散乱体サイズの真値の既知なマイクロスフィアを用いた模擬実験によるシステム評価を行って,散乱体サイズの計測精度が十分あることを確認した。 (3)In vivo実験(各種疾病を有する被験者の赤血球凝集の差の検出):計測は,手甲静脈に対して行い,最初に安静時のデータとして2分間,駆血中に4分間,そして駆血を開放し血流が戻った状態で3分間計測を行なった。これら9分間において,10秒ごとに計測し,各々の正規化パワースペクトルの傾きから,散乱体サイズの推定を行い,その時間変化を求めた。以上の計測を,患者に適用し,データを整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の(3)In vivo実験(各種疾病を有する被験者の赤血球凝集の差の検出)は,当初,次年度に行う予定であったが,予想以上の進展があったため,前倒しして実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
(3)In vivo実験(各種疾病を有する被験者の赤血球凝集の差の検出)に関して,さらにデータを精査する。 (4) 血管内の散乱体の大きさの内腔方向の分布の算出:上記臨床応用と同時に,血管内の散乱体の大きさの空間分布を算出するという非常に難しい課題に挑戦する。困難である原因は,対象とする皮膚に近い手甲静脈は,内直径が1mm程度であり,内腔内の凝集の空間分布を求めるための超音波スペクトルを求める窓幅の短縮が難しい。しかし,内腔内で散乱体の凝集の程度には確かに差のあることが分かる。これは血流の速さの空間分布にも依存するものと考えられる。駆血後の静脈内の血流分布の時間的変化も同時に計測することにより,内腔内の凝集に空間分布がある原因を検討する。原因が明確になった段階で,上記(3)でin vivo計測した超音波RFデータの解析し直しを行い,内腔内の凝集に空間分布の影響を受けない評価手法の導出と,臨床データの再解析の結果を得る。 (5) 総括:in vivo実験において,正規化パワースペクトルの駆血による傾きの変化,得られた赤血球凝集サイズの変化をまとめる。これらの結果から,肥満・糖尿病・高血圧・動脈硬化・伝染病・敗血症・アレルギーなどによる炎症と赤血球凝集発生のし易さの相関関係を導出する。同時に,患者の血液に関する炎症反応の評価値も参考にする。以上よりより,超音波によって,赤血球凝集発生のし易さを非侵襲計測することによって,血液性状の異常や疾病の発見のための初期診断の指標となり得るかの検討を行って,本研究の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記の(3)In vivo実験は,簡便なシステムで行ったが,計測時間が長いなど被験者である患者への負担が大きい欠点が明らかになった。その課題の改善のために,機械の仕様を決定し準備を行うことに手間取り,予算を次年度に繰り越して使用することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
患者に負担を掛けないように,速やかに機械の仕様を決定し準備を行なった上で,以下の実験を行う。(3)In vivo実験に関して,さらにデータを精査する。(4)血管内の散乱体の大きさの内腔方向の分布の算出:
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