研究課題/領域番号 |
26630183
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
粟辻 安浩 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (80293984)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 3次元計測 / 位相 / 強度輸送方程式 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本研究では,動く物体に対するナノメートルオーダーでの3次元動画像計測が可能かつ堅牢かつ装置化が簡便な技術の実現を目指して,光干渉が不要な並列強度輸送方程式を用いた計測法(並列TIE法)の実証システムを設計と構築を行った. 並列TIE法に基づくシステムとして,まず,装置構成の容易さを考慮して光源にLEDを,さらに1画素毎に光路長を変えられる素子として,偏光板と偏光カメラを用いた光学系を設計した.並列TIEを実現するには,LEDは光量が低く,さらに発される光の波面が整っていなかった.そこで,まずLEDからの発散光を一旦,凸レンズで集光し,集光した部分にピンホールを設置して空間フィルタリングを行った.この空間フィルタリングにより,LEDからの光の波面整形を行った.波面整形をした光ビームを用いて並列TIE法を実験した.被写体には,厚さを変化させた透明なフィルムを設定した.構築したシステムにおいて,記録した1枚の画像から,並列TIE法の像再生処理を行った.その結果,被写体の厚さの2次元分布を,位相イメージとして得られ,所望の結果を得た. さらに,並列TIE法では,得られる再生像がノイズに大きく影響されることが分かった.そこで,並列TIE法における再生像の精度低下の原因を解析し,並列TIE法において画素ごとに設定する光路長差として,ノイズに応じて適切な値を検討することが必要であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題である非干渉型ナノオーダー精度3次元動画像計測法のための光学系の設計ならびに構築ができた.また,構築した光学系により,非干渉型ナノオーダー精度3次元画像計測の可能性を実験により示せた.以上の成果が得られていることにより,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
並列TIE法では可干渉性の低い光源を用いた高速度高精度3次元動画像計測が可能,ならびに自発光物体の高速度高精度3次元動画像計測が可能という特長があり,平成27年度は,これらを実証する.可干渉性が低い光源としてまず,フェムト秒パルスレーザーを用いる. さらに,可干渉性がより低い光源として高輝度LEDを用いて,光源に連続波レーザーやフェムト秒パルスレーザーを用いた場合と同等の結果が得られるかどうかを試験する. 次に,物体として自発光物体を設定し,並列TIE法の実証を行う.自発光物体としてまずは十分な光強度が得られるように,奥行きを変えて配置したLED群を設定する.LED群を高速変調させた場合やLED群を空間的に動かした場合に対して,試作システムの高速度高精度3次元動画像計測能力を実証する. また,並列TIE法を実現するための,より堅牢なシステム,実用的なシステムに構成方法について検討する.さらに,並列TIE法を顕微鏡へ応用するための問題点を明らかにする. 最後に本研究で得られた成果や問題点を評価し,並列TIE法で得られる高速度高精度3次元動画像計測能力を総括する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の実験系として時間コヒーレンスが低い光源が有効であり,空間コヒーレンスについての検討が必要であることが研究期間中に分かった.
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題の実験に,時間コヒーレンスが低く,空間コヒーレンスが高い光源を購入する.
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