光干渉が不要な並列強度輸送方程式を用いた計測法(並列TIE法)において,得られる再生像がノイズに影響を受けることが平成26年度の研究で明らかとなった.そこで,並列TIE法における再生像の精度低下の原因を解析し,並列TIE法によって位相再生可能な光路長差を調べた.その結果,並列TIE法によって位相再生可能な光路長差が,物体の位相と記録時のノイズ量に依存することを明らかにした. 次に,並列TIE法を実現する光学系を考案し,並列TIE法を実現する上での問題を検討した.先に得られた結果を受けて,2光路型のシステムを考案した. 考案したシステムにおいて,2光路に分割した光波を再び合波する際に光軸のずれが生じ,このずれが再生される位相に影響を及ぼすことが分かった.そこで,このずれの影響を調べ,この影響を確認する実験を行った.さらに,光軸のずれた2枚の記録画像のトリミング位置を変えて,光軸ずれの影響を補正する方法を考案した.しかし,この補正法だけでは,再生した位相画像に物体の微細構造を確認できないことが分かった. 次に,2光路型において,ビームスプリッタによって分割された各光路の光強度比が正確に1:1ではないことが,再生される位相分布に与える影響を調べ,この影響は大きいことが分かった.この影響を補正するために,記録した強度画像の一方に補正係数を乗じることで,2光路型における各光路の光強度比を補正して位相を再生する方法を考案した.先に行った実験結果に対して,考案した補正法を適用したが,物体の微細構造は再生できなかった.この結果は,2光路型において分割した光の強度比が空間分布を持つと考えた.そこで,画素ごとに補正係数を求めて補正関数画像を作成し,光軸ずれの補正を行った2枚の強度画像の一方に作成した補正関数を乗じて位相を再生する方法を考案した.考案法を適用した結果,物体の微細構造を再生できた.
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