研究課題/領域番号 |
26630185
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮戸 祐治 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80512780)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 計測工学 / 走査プローブ顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 振動解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、高速原子間力顕微鏡 (HS-AFM)のシステムに、力検出センサとして水晶振動子センサを組み入れ、その水晶振動子センサの連成振動を検出することで高速な静電気力・磁気力の検出を実現しようとするものである。水晶振動子センサの振動解析のため、センサに含まれる2本のプロングの振動を独立に測定することで観測される機械的振動信号と、センサの圧電効果によって電気的に検出される振動信号とを比較することが重要となる。両プロングの変位検出を行うには、光てこ変位検出用の光学系を2系統構築する必要がある。昨年度はケージシステムにより片側だけ構築するところまで進めており、本年度はそれを両側に拡張した。また、昨年度に設計まで進めていたプリアンプを実際に回路基板で組み立て、差動アンプ回路やレーザ駆動用の周辺回路も充実させた。フォトダイオードをバイアスして容量を低減し、検出帯域を10 MHzほど確保する設計であったが、まずはバイアスせずに回路の基本性能を確認した。帯域は5 MHz程度で低くなったものの、検出上はバイアスなしでも問題ないと判断した。次に、全体として所望の動作ができるか確認してみた。プロング幅は狭いため、光てこ系において十分にレーザ光を絞る必要がある。しかし、実際に絞って照射してみると、反射光としてフォトダイオード上に映し出されるレーザビーム形状はいびつであった。これが原因と思われるが、十分な感度がでておらず、目下、改良を進めている。改良が済みしだい、効率的に連成振動を検出できるようパラメータ等を確立する予定である。一方、本研究においては静電気力・磁気力の検出とは別に高速AFMとして表面形状も測定できなくてはならない。そこで、所有しているデジタルロックインアンプHF2LIにHF2LI-MFマルチ周波数オプションを追加し、バイモーダル検出が可能なように準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度で、水晶振動子の連成振動を実験的に検証するために必要となる2系統の光てこ系および回路系に関しては、一応の完成までこぎつけた。ただし、感度よく検出できるように注意して設計していたものの、現状では十分な性能が出ておらず、問題点・原因を検討して、改良を進めているところである。電気的に振動を検出するところはできているので、光てこ系による振動検出ができるようになれば、検証実験は順調に進んでいくものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のポイントは水晶振動子の機械的な共振振動に対し、静電気力や磁気力を変調させて生じると考えている連成振動を実証することにあり、これを測定できるように開発したシステムを改良していくことが喫緊の課題になっている。現在、これを集中して進めているが、測定さえできるようになれば、これまでにシミュレーションで調べたパラメータを手掛かりに、効果的に検出できる条件を見出し、申請の段階での仮説を実証するところまで進める。次年度は最終年度であるが、その結果をHS-AFMシステムに反映することは比較的容易と考えており、目標性能を達成できるよう研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画段階で購入しようとしていたロックインアンプのオプションが円安の影響で価格が上昇しため、前年度から本年度に購入することに計画変更していた。これにもない、前年度の一部予算を本年度に繰り越していた。繰り越し分は、前年度の変更計画に則り、本年度に使用させていただいたが、繰り越した全額を使用せずに済んだ。その分もあり、本年度から次年度に繰り越し予算が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究に使用している高速AFMは一部が市販品のシステムで、ヘッド部は自作している。AFM画像を高速に取得できるものの、本研究では比較的広いエリアを取得しようとしているので、ドリフトの影響が出やすかった。そこで、機械的な安定性も向上できるよう、自作ヘッド部の改良に繰り越し予算分を有効利用させていただく予定にしている。
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