本研究は、X線CTやMRI、さらにはSQUIDなどのように被曝や磁気シールドを必要としない、次世代生体トモグラフィ装置である非接触な電流誘起磁気トモグラフィ(Current Induced Magnetic Tomography:CIMT)の技術開発が最終目的とする。 CIMTでは、1MHz程度の高周波電流を0.1mA程度体内に非接触で流し、体内の電気力線から誘導された磁気強度を、体幹周囲に複数配置された超高感度光ポンピング原子磁気センサで計測する。昨年度までに、内径5mm角のガラスセルにルビジウム(Rb)を充填したセンサセルを用い、静的再偏極モードかつ、直線偏光のシングルビームによる非線形磁気光学の光プロービングを採用した、超高感度光ポンピング原子磁気センサ測定システムを構築した。 そこで今年度は、10kHz~5MHzまで1mA以下の定電流が印可可能な高周波定電流回路、ならびに5MHzにおいて-3dBの広帯域特性を有する高周波差動増幅回路を開発し、100kHzおよび1MHzにおける測定システムの測定感度を評価した。正弦波を入力信号とし、振幅を減少させて磁気検出限界強度を求めた。その結果磁気シールドを用いた場合は、100kHzおよび1MHz で100nTであった。さらに磁気シールドを外した場合、100kHzで1uTであった。一方、0.1Aの十分な電流振幅を有する方形波で磁気を励起した場合に得られた検出感度が、磁気シールドを用いた場合に100kHzで13pT/√Hzと大きく異なった。この理由として微弱磁気においては、フォトディテクタから測定回路などへの長い信号線によるノイズが影響していることが考えられた。今後は、測定系を一体することで大幅なノイズ低減を実現する予定である。
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