コラーゲンなどの「骨質」を非侵襲かつ安全に評価する超音波技術を開発するため下記の研究を進めた。 GHz域の音速測定が可能なBrillouin光散乱法とMHz域の音速測定が可能な超音波法により、ウシin vitro 骨試料中に生成したAGEs(Advanced Glycation End Products)が縦波音速に及ぼす影響を複数の試料を用いて実験的に検討した。音速は骨弾性を反映し、硬くなると増大する。 Brillouin光散乱法では、集光により薄片試料中の10μm径程度の微小領域の音速測定ができ、骨微細構造の影響なしに骨質測定が可能となる。本研究では樹脂包埋せずに100μm厚程度の薄片試料を作成し、糖化培養により試料中にAGEs架橋を生成した。液体クロマトグラフのアミノ酸分析システムにより、14日の糖化培養では無糖化参照試料の2-3倍の架橋生成を確認した。この試料の糖化培養過程で音速を計測したところ、培養開始後3-4日で音速がわずかに増加した後低下に転じ、最終的には全試料で5-6%の音速低下を認めた。無糖化試料ではこのような音速変化はなかった。この結果は糖化による力学的性質の変化を示している。 MHz域の超音波測定においても糖化の影響を確認した。厚さ0.5~1.0mmの板状試料を作成し、糖化培養過程で音速を観測した。波長に比べて板厚が小さいため音速の精密測定が困難であったが、すべての糖化試料、無糖化試料で音速が低下し、音速低下は無糖化試料で著しかった。また糖化の1試料において、光散乱計測と同様に初期の音速上昇とその後の低下が観測された。なお培養後の糖化試料の強度を3点曲げ試験で評価したところ、糖化試料がより低負荷で降伏に至った。MHz域の測定では、全試料中を伝搬する音波の平均音速を計測する。試料中の微細構造の変化や微小クラックの影響を受けて音速が低下した可能性がある。
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