研究課題/領域番号 |
26630204
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
浜田 秀則 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70344314)
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研究分担者 |
佐川 康貴 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10325508)
山本 大介 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (40398095)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腐食防食 / 鋼繊維 / 砂鉄 / 磁性モルタル / 電気化学的性質 / 酸素拡散 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は磁気を利用した新たな防食技術の開発である。そのための研究ステップとして、以下に示す2項目の実験的研究を計画した。Aシリーズ(セメント硬化体の透磁率の測定)、(1) 非磁性モルタル(水セメント比の異なる普通セメントモルタル)、(2) 磁性モルタル:(砂鉄を混入したモルタルおよび鋼繊維を混入したモルタル)、Bシリーズ(磁気が鉄筋の電気化学的性状および腐食性状に及ぼす影響の把握)である。 今年度は、供試体を用いた実験を実施した。供試体の製作に使用したモルタルは、普通モルタル、鋼繊維混入モルタルおよび砂鉄混入モルタルとし、さらに、鋼繊維混入モルタルと砂鉄混入モルタルは2段階の混入率とした。普通モルタルの相対透磁率(空気中の透磁率=1.0に対する比)は1.0程度と想定され、これに鋼繊維もしくは砂鉄を混入することにより相対透磁率は1.0よりも大きくなる。磁性モルタル中に埋設した鉄筋の電気化学的計測を行うことにより、モルタルの磁性が内部の鉄筋の電気化学的性質に及ぼす影響を実験的に検討した。 今年度の実験の成果として、(1)モルタルに鋼片を添加した場合Sf,SSともに鉄筋の自然電位の変動を抑制する効果が確認できた。(2)分極曲線から鉄筋の不動態状態は変化しておらず鋼片添加の影響を受けていないことがわかった。(3)分極曲線およびに酸素拡散係数から判断して,鋼片添加による鉄筋への酸素供給量の抑制効果は小さいと考えられた。(4)本研究から,腐食抑制効果の一つは自然電位の変動の抑制によるものと考えられた。以上の実験の成果は、平成27年3月卒業生の寺島大樹氏の以下の卒業論文に取りまとめた。「鋼片添加によるモルタル中鉄筋の防食に関する実験的研究」
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は計画している研究のほぼ50%に相当する実験は終了することができた。ただし、後半の実験の方が難易度は高いため、達成度としては、控え目な自己評価としている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の発想は、鋼材を電気的に防食することができるのであれば、磁気的にも防食できるのではないかとの着想である。しかしながら、一部の既往の論文においてもそのメカニズムが明らかにされるまでには至っていない。他方、これまでの研究において、コンクリート中に鉄粉が混入された場合、鋼繊維が混入された場合、あるいは、鉄鉱石が骨材として使用された場合など、磁性材料が存在するセメント硬化体中の鋼材は腐食が抑制されることも古くから報告されている事実である。この腐食抑制現象もその機構は明らかにはなっていない。本研究は、これらの異なる実験結果には共通のメカニズムが存在する、すなわち、セメント硬化体の透磁性が腐食機構に影響を及ぼしているとの仮定を基礎としている。本研究においては、さらに、コンクリート中の鋼材のマクロセル腐食の抑制も視野に入れている。特に、鉄筋コンクリートの断面修復を実施した際に発生するマクロセル腐食は鉄筋の一部分を集中的に腐食させることから、構造物の耐久性を大きく低下させ、最悪の場合構造部材の崩壊にもつながる劣化であるが、その防止技術は確立されていない。局所的な腐食を防止するには電気防食よりも磁気防食の方が用い易いと考えており、磁気防食はマクロセル腐食抑制という場面で大きく貢献するものと考えている。 次年度は、このマクロセル電流に及ぼす磁界の効果を確認する実験を進めていく予定である。この実験はかなり難しいのも事実であるが、2年目はこの実験に取り組む予定である。
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