研究課題/領域番号 |
26630207
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
麓 隆行 近畿大学, 理工学部, 准教授 (30315981)
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研究分担者 |
竹原 幸生 近畿大学, 理工学部, 教授 (50216933)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コンクリート / X線CT / PTV / 画像計測 / 圧縮 |
研究実績の概要 |
平成27年度では,平成26年度の結果を受けて,ジルコニア球を用いたモルタルの内部変形計測を実施した.また,内部変形の計測精度を改善する方法を検討した. 直径0.3mmのジルコニア球を混入したモルタルを載荷しながら本装置で撮影を実施しPIV計測を試みた.その結果,低ひずみ領域で供試体の高さ方向中央への軸方向の圧縮変形やポアソン変形が,また高ひずみ領域でせん断面が生じる様子が確認できた。以上から,ジルコニアを用いた内部変形計測が可能であることがわかった. より局所的な変形を計測するためには,ジルコニア球の個別の移動を計測することが重要である.そこで,測定点の計測精度を確認した.40個の直径約14mmのセラミック球を容器に詰め,静置した状態でX線CTにより重心座標を12回計測した.その結果,系統誤差は最大で約0.045mm,計測誤差も同様に最大で約0.016mmとなった.ただし,内部変形には規則性があったことから,固定した基準点を設けて,幾何変換(アフィン変換)を用いることで撮影機構上の誤差を減らすことを試みた.その結果,6回程度であれば,系統誤差0.012mm,計測誤差0.006mm以内の誤差で計測可能となった.この手法を応用し,XYZの各方向に0.01mmずつ12回移動させて移動距離を計測した.XYZ軸方向への移動に対する系統誤差は-0.006~0.016 mm,その計測誤差0.011mm以内であった. 以上の結果を受けて,現在,ジルコニア球を用いたモルタルの変形計測を,PTVを用いて行うことを試みている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,コンクリート内部の局所的な変形挙動を計測する手法を開発することを目的とし,トレーサーの選定,計測手法の確立,コンクリートへの適用性の3段階で研究を進める予定である.平成27年度は計測手法の確立を目的とした.変形の大きなポリマーコンクリートで試みる予定だったが,コンクリートの内部変形は小さく,より計測精度が求められる.そこで,選定したジルコニア球を混入したモルタルを用いて,計測手順の確認および計測精度の改善を実施した.結果として,予定どおり計測精度の改善方法を確立し,X線CT法とPTVを併用した内部変形計測の手順もおよそ確認できた.今後,その確立された計測手法での精度確認を行うことで,平成28年度から取り組むコンクリートへの適用性を確認するための準備ができてきたことから,おおむね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の結果を受けて,平成28年度では,選定した条件での計測手法を用いて,コンクリートの圧縮強度試験などの計測を実施し,その適用性と課題を明らかにする. まず,選定した条件での計測手法を用いて,指標を入れたモルタルやコンクリートの圧縮強度試験を中心に,X線CT法やPTVでの計測の適用性とその課題を明らかにする.コンクリート供試体側面にひずみゲージも張り付け,実際の変形と画像計測の整合性を確認する.その上で,内部変形に関する考察を行う.W/Cや骨材の種類の異なるコンクリートに適用し,使用材料や配合が及ぼすコンクリート性状への影響を明らかにできるか検討する. また,乾燥収縮や凍結融解を行った後のコンクリートの内部変形計測を実施したいと考えている.この場合,長期間過ぎた後に実施した画像計測結果を比較することになり,機械誤差が増大する可能性がある.そこで,課題を明らかにし,その改善方法を検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
大型ソフト等の購入を行ったが,その金額が少し安価であったため,執行額に余裕が生じた.次年度の消耗品の購入費として有効に利用するため,繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度では,選定した条件での計測手法を用いて,コンクリートの圧縮強度試験などの計測を実施し,その適用性と課題を明らかにする.そのため,コンクリートの原料ならびにトレーサー等の材料費として24万円使用する.これらの作業やX線CT撮影の補助作業に5万円の謝金を予定している.そして,解析のための打ち合わせや成果発表のための旅費として15万円を使用する予定である.最後に研究を終えた試験体等の廃棄金額として,6万円の支出を予定している.
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