平成28年度には,選定した条件での計測手法を用いて,コンクリートの供試体の内部に生じる圧縮や引張による変形分布計測に対する適用性とその課題を検討した. まず,選定した条件での計測手法を用いて,0.3mmのジルコニア球を用いたモルタルの変形計測と側面に貼り付けたひずみ計測値との関係を考察した.その結果,内部変形計測での値とひずみゲージ値との差は,載荷荷重によりばらつきはあるものの178~274μとなった.このひずみの差は,長さ50mmを基長とすると0.010~0.016mmの変形量に相当した.すなわち,昨年度までの研究結果で示された,X線CT装置による機械的な誤差(-0.006~0.016mm)と同程度であった.よって,もう少し計測方法の改善が必要だとわかった. 計測方法の改善の一つに,重心位置の計測精度向上が考えられた.そこで,粒径0.3,0.65,1.0mmのジルコニア粒子をモルタルに同体積混合し,粒子数の確認や精密移動台を用いて既知の移動量に対する計測精度に関する確認を行った.その結果,粒子数が大きくなるほど,計測精度が向上し,粒径1.0mmで0.005mm程度の誤差となった.しかし,計測範囲内の粒子数が大きく減少し,粒径1.0mmで粒子数が5000個程度となった. 以上から,供試体によるX線CT法とPTVを併用した内部変形計測では,粒径1.0mmのジルコニア球を用いた場合に,精度良く全体的な内部変形を計測できることが明らかになった.局部的な計測には,粒径0.6mmのジルコニア球を用いて粒子数を増やすのが良いが,粒子同定精度の改善や画像解析手法の検討が必要であることがわかった.今後も,改善を進め,局部的な計測も可能なX線CT法とPTVを併用した内部変形計測手法を確立したい.
|