研究課題/領域番号 |
26630208
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横田 弘 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50344312)
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研究分担者 |
橋本 勝文 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30609748)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 維持管理 / 補修 / 延命化技術 / 再劣化 / 構造性能 |
研究実績の概要 |
コンクリート構造物の代表的な劣化現象である塩害(塩化物イオンがコンクリート中に侵入し、コンクリート中の鋼材腐食を促進させる現象)を人為的に促進させて再現したモルタル試験体に対して、(1)電気化学的脱塩工法(塩化物イオンを電気化学的に外部に排出する工法)および(2)劣化部分を除去して短繊維混入ポリマーセメントモルタルを吹き付けて断面修復する工法を適用し、これらの補修効果を実験的に調べて考察した。 (1)について:脱塩処理を複数回繰り返すことによるモルタルの微細構造への影響について、Vickers硬さ試験およびXRD(X線回折)試験により定量化した。その結果、陽極近傍においてはVickers硬さが減少し、それが脱塩処理の繰返しにより助長されることを確認した。つまり、陽極近傍ではセメント水和物の緻密化が損なわれる可能性が高いことを示した。陽極周辺の水和物の組成については、ポルトランダイトが増加した一方でC-S-H(カルシウム-けい素-水の化合物)が分解する傾向を示すことを明らかにした。また、EDS(エネルギー分散X線分光法)、TG-DTA(示差熱熱重量同時測定法)によりセメント水和物の同定を行い、脱塩処理の影響をさらに詳細に分析した。その結果、脱塩処理を一度に時間をかけて実施するよりも、同時間を複数回に分割して実施することが脱塩の効果が高く、またモルタル微細構造への影響を小さくできることを明らかにした。 (2)について:鉄筋の腐食の程度、劣化部分の除去の範囲、ひび割れ補修の有無等を因子とした吹付け補修試験体を製作した。年度末の時点で再劣化の処置を実施中である。一方、用いる短繊維として、漁網よりリサイクルしたナイロン繊維の適用可能性を実験的に議論した。その結果、従来のPET繊維等との比較を通して、いくつかの改善点は残ったものの、適用可能性が認められることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度末時点では達成度が「やや遅れている」と評価したが、平成27年度はポリマーセメント吹付け工法による補修を再現するための試験体の製作および準備をを精力的に進めた結果、補修実施は完了し、補修後の再劣化を再現させる段階まで進めることができた。また、廃棄漁網よりリサイクルしたナイロン繊維を活用するための予備検討を実施した。これは、当初計画になかった新たな取り組みである。 これらのことから、遅れを取り戻すことができたと考えており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は最終年度であるので、脱塩工法およびポリマーセメント吹付け工法による補修効果およびその副次的な作用を詳細に分析し、成果をとりまとめる。必要な試験体の製作はすべて終了しているので、所定の再劣化が再現できた段階で順次分析および性能確認のための試験を実施する。そのための準備はできており、所定の成果が得られる目途はついている。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析に要する費用や研究情報収集・成果発表の旅費等が節約できたことから、当初予定の使用額より338千円弱の残が生じている。ただし、昨年度3月に吹付け補修の処理を実施したことからこのうちの約220千円は既に使用しており、実際の次年度使用額は約118千円弱となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
吹付け補修を行った試験体に対する載荷実験のためのひずみゲージ等の消耗品購入および国際会議における研究成果発表を2件予定しており、これに充当する。
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