粒径数mm未満の粉鉱石サイズの鉄鉱石(以下では鉄鉱粉と称する)の船舶貨物輸送中に生じる液状化現象を対象として、その詳細なメカニズムと発生条件を解明するため、以下の点に関する検討を実施した。 a. 船積み直後はほぼ一様と考えられる積荷内での水分分布が、輸送中にどのように変化するか? b. 荒天等で過大な船体動揺が生じた場合に、積荷がどのように応答するか?(液状化が生じるとすれば最初にどこで生じて、その範囲と影響がどのように拡大するか?) c. 液状化の発生を防止する、あるいは液状化が生じても船体の安定性に深刻な影響を及ぼさないようにするために、船積み時の水分、密度管理と輸送中のビルジ管理をどのように行うべきか? 最終年度である本年度は、特に上記bに関して、さまざまな密度および拘束圧下での飽和した鉄鉱粉の非排水三軸圧縮試験を系統的に実施して、同様な粒度分布を有するが通常の地盤材料である硅砂の試験結果と比較した。その結果、同一の間隙比で比較した場合には鉄鉱粉は硅砂よりも小さい拘束圧で定常状態に至ることを明らかにした。さらに、このような定常状態が生じる密度・応力条件と、船積み状態での初期密度・応力状態を比較することで、流動的な大変形が生じる可能性の有無を評価できることを示した。また、試験前後の鉄鉱粉試料の粒度分析結果を比較することにより、高い拘束圧で試験を行った場合ほど、著しい粒子破砕が生じており、前述した力学挙動に影響を及ぼしていると考えられることを見出した。
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