研究課題/領域番号 |
26630224
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
庄 建治朗 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40283478)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 古日記天気記録 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、気象観測データと比較可能な明治時代後期から大正時代にかけての日記天気記録の収集整理を進めた。近江八幡・東近江・大津・京都・生駒の7日記について収集をほぼ完了し、天気記録と日単位の降水量・気温観測データとの関係を解析した結果を国際第四紀学連合第19 回大会(7/26-8/2、名古屋)にて発表した。また、過去の古気候研究で多年にわたり収集されてきた、江戸時代の近畿・東海地方を中心とする日本各地の天気記録データを利用させていただける見通しが得られた。これと並行して、前年度の研究で梅雨時期の湿度の変動を詳細に復元できる可能性が見出された、樹木年輪酸素同位体比の年輪内変動の測定を進め、琵琶湖南岸地域のヒノキ標本について、気象観測データとの比較が可能な近年約20年分と18世紀前半の約50年分を年輪幅に応じて1年輪2~24分割した測定を行った。その結果、享保年間(1716~1735)の頃には梅雨時期の年毎の乾湿変動が非常に激しく、極端に乾燥した梅雨期が数年に1回程度の頻度で生起していることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
樹木年輪セルロースの酸素同位体比の年輪内変動を測定することで、梅雨期前後の期間の湿度の詳細な変動を復元でき、古日記資料から復元した入梅・出梅日や梅雨期間中の降雨状況等を検証・補完する有力な資料となる見通しが得られたことから、当初研究計画にはなかった琵琶湖南岸地域のヒノキ標本についての酸素同位体比の年輪内変動の測定を並行して行った。そのため、18世紀前半における梅雨期の乾湿変動について新たな知見が得られ、近代と江戸時代の天気記録収集も概ね順調に進んでいるものの、梅雨パターンの類型化や長期変化傾向の解析はあまり進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果は5月に開催される日本地球惑星科学連合大会で発表する。今後も引き続き、古日記天気記録の収集充実に努めるが、最終年度であることから、資料の整理・データベース化や成果の取りまとめに重点を移す。年輪酸素同位体比の年輪内変動データについても、天保の飢饉期などを中心に測定を進める。筆者が共同研究員として参加している総合地球環境学研究所気候適応史プロジェクトとも連携してデータ収集・解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究経費の使用状況は、概ね計画通りであるが、旅費等の一部に他の経費(筆者が参加している総合地球環境学研究所プロジェクトの経費)を使用できたことから、第2年次には実使用額は計画より6万円ほど少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
第3年次の経費使用計画も基本的に当初計画通りであり、調査のための旅費と資料収集・整理のための人件費、論文投稿にかかる経費等が主な使途である。
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