低平盆地の下流端が山付きの狭搾区間であるために浸水被害が度重なる円山川の河口2-13km区間では,河道内樹林と中州が疎通能力を阻害し治水上の課題となっている.樹林啓開や堆積土砂の処理など河川の維持管理を省力的かつ効率的に進めることが当該区間において最大の課題であり,洪水疎通能力を目的関数とする戦略的計画論によって樹林伐採方法(範囲,施業頻度,伐採量など)を確立する必要がある.本研究では,洪水時における水理解析によって,河道内樹林,河道内掘削が疎通能力に及ぼす影響を検討し,河道の樹林化が進む河川における管理計画に資する科学的知見を得た.洪水流解析においては,樹林調査に基づく樹林帯の設定と地理情報データベースの移植により河川地形を忠実に反映できる二次元浅水流モデル用いた. 2004年10月20日出水による災害をきっかけとして当該区間では激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)が実施された.解析モデルのパラメータ同定と地形・植生設定の適正化を図るために,同出水における水位・流量時系列を再現し,次に,激特事業後の地形に対して同出水の洪水解析を行い,樹林帯や砂州近辺の局所流況・土砂動態に着目して激特事業が洪水疎通能力に及ぼす効果を検証した.また,樹林帯の伐採管理ならびに中州など堆積土砂の維持掘削が治水機能に及ぼす影響を定量的に評価するために,これらの整備・維持管理のシナリオを両者の組み合わせも含めて複数設定し,洪水解析を実施した.各整備シナリオと洪水位低下機能との関係が定量的に評価され,治水と環境整備が一体化した河川管理の戦略指針が示された.水理解析と樹林啓開の設定シナリオを組み合わせることにより,予算や河川管理上の制約条件下で洪水疎通能力を最大化する樹林啓開・堆積土砂管理計画の最適化が可能となった.
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