研究課題/領域番号 |
26630232
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
萩原 亨 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60172839)
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研究分担者 |
濱岡 秀勝 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70262269)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 交通工学 / 道路照明 / プロビーム配光 / 交通安全 |
研究実績の概要 |
既存の灯器を応用したプロビーム照明を使い,テストコースにおけるドライバによる歩行者視認性評価実験を平成27年度の秋に行った。対称照明と比較し,プロビーム照明の歩行者視認性のメリットを明らかにすることを目的とした。本実験では,屋外のテストコース(片側2車線)にて3本の照明ポール(8m)を32m間隔に設置した。各々のポールに対照照明とプロビーム照明を設置し、切り替えて両者の比較を行った。プロビーム照明専用の灯具はないため、既存の灯器を用い理想のプロビーム照明に近い配光を実現した。歩行者として、高さ165cm・最大幅80cmの歩行者を模擬したダンボール製自立式の人形を作成した。人形には黒色の紙(反射率8%)と灰色の紙(反射率23%)を用いた。照明ポールの位置と車両の位置を相対的に変化させ、人形の視認性がどのように変化するのかをプロビーム照明と対照照明で計測した。車両から人形までの距離は22m,44mとした。実験参加者はロービームを点灯している車内から人形の視認性を評価した。車両に乗って、歩行者視認性を評価した実験参加者は12名である。実験参加者はランダムに提示される人形を見てその全体の視認性を7段階で評価した。ただし、実験時に霧雨となり、路面が若干湿った状態であった。視認性評価実験の結果、プロビーム照明下において、左歩道を除き人形の視認性評価は「やや見えやすい」から「見えやすい」となった。プロビーム照明による視認性は、人形の反射率にかかわらず対照照明と同様あるいは高くなった。また、対称照明下に比べプロビーム照明下では照明のポールと車両の位置関係によって視認性の変化が少ない結果となった。本実験で用いたプロビーム照明は、既存の灯具を組み合わせ理想のプロビーム配光に近づけたものである。このような試作であっても、プロビーム照明による潜在性能の高さを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では。街路の夜間における道路上の歩行者の視認性を高めることを目的とし、これまでと正反対の照射方法を道路照明で採用することを試みる。これまでの道路照明(対照照明)は、路面を明るくする。このとき路面上の歩行者は路面より暗い。明るい路面と暗い路面上の歩行者の対比が視認性の原理となっている。これに対し、本研究で検討するプロビーム照明ではヘッドライトと同様に車両の進行方向に道路照明を照射する。暗い路面と明るい路面上の歩行者との対比が視認性の原理となっている。歩行者が「明」で安定して見えることから、夜間における横断者との事故の軽減に資すると考えられる。平成26年度、プロビーム照明の配光を提案し、光学シミュレーションにて歩行者の視認性を検討した。最初にプロビーム照明の配光を設計した。配光を設計するため、対向車のグレアを小さくしかつ歩行者の視認性を高くする路面理想輝度分布を想定し、それから水平面照度分布を求め、照明器具の目標配光を決定した。目標配光から路面輝度分布を再計算し、再計算した路面輝度分布が前述の路面理想輝度分布となるまで繰り返し計算した。このようにして決めた配光によるプロビームを設定し、ロービームを点灯した条件で、歩行者の鉛直面照度とコントラストを求めた。同様な条件の対照照明条件に比べ歩行者の視認性を安定して高くできる結果と得た。次に、平成27年度、光学シミュレーションの結果を実際の道路で検証することにした。平成26年度の配光に近いプロビーム照明を既存の灯具を用いて作成し、実験参加者による歩行者視認性実験を実施した。ただし、費用の制約もあり、片側1車線のみを対象とした。研究実績の概要に記したように、テストコースにおける実験でも光学シミュレーションと同様、対照照明より歩行者の視認性は同等以上となり、かつ安定した視認性を提供できることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度の成果を発表し、道路照明および交通工学の専門家とプロビーム照明のメリット・デメリットについて議論する。これらの議論を踏まえ、光学シミュレーションを再び行い、プロビーム道路照明の灯具を設計するための基礎を固める。プロビーム道路照明は複雑な配光が要求されるが、このような配光を単純な装置で実現するための工夫を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月中に物品が納品となり、支払が4月になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
3月納品物品の4月の支払に使用。
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