本研究では,大規模災害時に全国各地から被災地へと義援物資が集中的に届けられることで発生する混乱を避けるために有効なマッチングシステムを開発・実装することである。 前年度までにマッチングシステムのプロトタイプとなるアルゴリズムと入力インターフェースを開発し,WEB上で稼動するシステムとして実装した。また,輸送車両の離散性を考慮したマッチングシステムへとアルゴリズムの拡張を図った。 これに対し,本年度はマッチングシステムの費用負担を考慮したアルゴリズムの開発を行った。前年度までのシステムでは,マッチングシステムの運用に伴う費用は全て同システムの管理者が負担する仕組みを想定していた。しかし,これまでの大規模災害時には,義援物資の提供者は物資提供に加えて,被災地までの物資輸送を負担しており,マッチングシステム導入後は全ての費用をシステム管理者が負担することは不自然である。そこで,義援物資提供者の支払い意思額をマッチングシステムに入力させ,入力された情報とマッチングの結果に基づいて,システム利用者に費用負担させる仕組みを提案し,費用負担のためのアルゴリズムを開発した。マッチングシステムのアルゴリズムとしては,線形問題の潜在価格に基づく方法(車両の離散性を考慮しない場合)と,組み合わせオークションに基づく方法(車両の離散性を考慮する方法)の二種類を提案し,それぞれについて定式化を行い,理論的特性について検討した。
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