研究課題/領域番号 |
26630247
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
渡辺 幸三 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (80634435)
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研究分担者 |
風間 聡 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50272018)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 気候変動 / 遺伝的多様性 / 適応的進化 / 河川環境 / 水文モデル |
研究実績の概要 |
課題1「気候変動後の流域環境の予測」では,名取川(宮城県)流域のウルマーシマトビケラ,ヒゲナガカワトビケラ,シロズシマトビケラ,フタスジモンカゲロウの4種を対象に,遺伝的多様性をAFLP法で調査した.また,重信川(愛媛県)のカワゲラ6種を採取し,ゲノムワイドのDNAデータを解読する次世代DNAシークエンシング解析に必要なライブラリー作成を一部終了した.GCM(全球気候モデル)で流域内の気象条件を予測するために,名取川流域を対象としたダウンスケーリングを行い,複数の代表的濃度経路(RCP)シナリオの降水量・気温を予測した.そして,分布型流出モデルにより流域内の流量(流速・水深)と水温を空間分布を予測した。 課題2「気候変動後の種の生息分布予測」では,気候変動後の対象種の生息分布を予測する生息度適正度指数モデルを作成した。まず,課題1で予測された流域内の水温・流速・生息環境変数に,GISベースの地形・土地利用データ等を加えて,各解析グリッドの環境特性を定量化した。これら環境特性を説明変数,課題2で現地調査した対象種の個体群密度を目的変数とする非線形生息適正度指数モデルを推定した。この生息適正度指数モデルを流域全体に演繹的に適用し,将来,気候変動に伴って流域内の環境特性が変化した後の各種の生息可能(生息度適度>0.5)な範囲を将来の種の生息分布として推定した。 また,H27年度実施を計画していた課題3「流域環境と遺伝子の適応関係を定量化する連関モデルの開発」を前倒で一部実施した.課題1で得たゲノムワイドデータからBayeScan解析で環境選択性遺伝子座を同定した。そして,課題1で予測された水温・流量等の生息環境変数の中から,BayeScanで検索された各環境選択性遺伝子の遺伝子頻度と最も強い連関(相関)を示す環境変数を検索した。ヘテロ接合度(遺伝子多様度)Heと連関が認められた環境変数の関係を表す重回帰モデルを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初,H27年度の実施を計画していた課題3「流域環境と遺伝子の適応関係を定量化する連関モデルの開発」を一部前倒して実施することができたので,当初の計画以上に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
課題1~3を継続すると共に,今年度は当初の計画以上に進展したので,課題4「気候変動シナリオ下の流域内の遺伝的多様性の将来予測」にもH27年度中から着手してより精度の高い詳細予測手法の開発に繋げる.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度から予定にしていた一部の次世代DNAシークエンシング解析等の分子生物学的実験を次年度にまとめて集中して行う実験計画に変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
分子生物学的実験の消耗品や委託解析費として主に使用する計画である。
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