研究実績の概要 |
本年度は、シントロフィーによる有機物分解を支えるサポーター微生物の存在を解明するため、嫌気消化汚泥プロセスから採取した汚泥および豚糞を、6種類の基質(プロピオン酸、酪酸、安息香酸、酢酸、ギ酸、水素)で3年以上に渡り11世代継代培養してきた集積培養物の微生物群集構造解析を実施した。その結果、メタン生成アーキアが利用可能な基質(酢酸、ギ酸、水素)の集積培養物ではシントロフの優占が確認できなかった。一方、プロピオン酸、酪酸、安息香酸を基質とした集積培養物では、それぞれの基質を分解するシントロフ(Syntrophobacter, Syntrophomonas, Syntrophus)が優占していた。これらの3種類の集積培養物における水素利用メタン生成アーキアの種類は、ギ酸や水素で集積されたものと異なっており、「シントロフィー」という微生物間相互作用に特徴的なメタン生成アーキアが存在することが示唆された。また、これらの集積培養物では、シントロフ、メタン生成アーキア以外の微生物群、例えばBacteroidetes, Chloroflexi, Spirochaetes門に属する未知微生物群が存在しており、これらの微生物群が11世代にも渡り高度に集積された培養物の中に生存しているという事実は、プロピオン酸、酪酸、安息香酸を分解するシントロフィーにおいて何らかの重要な役割を果たしていることを示唆している。 さらに、サポーター微生物の恩恵を受けると考えられるシントロフの代謝機能に関する基盤情報を蓄積する目的で、Syntrophomonas属の比較ゲノム解析を実施し、酪酸分解経路や電子伝達に関与する酵素群の特定を実施した。
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