研究課題/領域番号 |
26630254
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丸山 一平 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40363030)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / セメントペースト / 収縮 / 水分逸散 |
研究実績の概要 |
平成26年度には,1)TiO2ナノ粒子を用いたセメントペーストの混練に関する技術の修得,および,2)炭化水素系ナノ分子を用いたセメントペーストの物性評価,の2通りについて研究を実施した。 1)については,市販の懸濁液として販売されているTiO2ナノ粒子を取り出し,セメントに混連する手法について検討を行った。TiO2粒子の分散性状は,既往の他研究に示されているように,超音波分散法によって実施することで,適切に分散できることを確認した。現在は,セメントペーストを硬化させているので,次年度は,収縮挙動と乾燥挙動について,水蒸気吸着等温線と長さ変化等温線の測定について検討する予定である。 2)については,収縮低減剤として販売されている炭化水素を参考にいくつかの炭化水素を合成し,2nm~20nm程度の分子をセメントペーストに混連して,その物性について検討した。2nm程度と非常に短い分子については,セメントペーストにおけるカルシウムシリケート水和物の近傍と気液界面の近傍に存在する傾向が示され,セメントペーストの収縮に関わる挙動に大きく影響することが明らかになった。今後,他の大きさの分子を混連したペーストについてもデータを取得して,それらの挙動について明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子の入手に手間取ったが,その後はおおむね実験は適切に実施されていると考えられる。次年度は,TiO2粒子を含むペーストの物性について評価する。予算の減額により,直接的に海外研究者のサポートを得られなくなったので,その点の進捗の不足はやむを得ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では,TiO2を異なる混和量,混連したセメントペーストの物性について取得する。物性は,密度,超音波伝搬速度(硬化の程度を測定する)の上で,湿度制御型TMAによる長さ変化等温線の測定と,水蒸気吸着装置による吸着等温線の測定を実施する。現在まで,TiO2などのナノ粒子がセメントペーストの水和反応速度に関しては,析出サイトとして機能していくことは,水和物の架橋をメソスケールには役立つことなどが明らかになってきているが,乾燥時の変質にどのように影響するかについては,あきらかになっていない。処女乾燥下のペーストの収縮の大部分は,カルシウムシリケート水和物(C-S-H)の変質によるところが大きいので,TiO2の混和が,C-S-Hの変質にどのように作用するかについて,湿度と長さ変化に着目して評価する。特に長さ変化等温線における非回復成分の量とTiO2量に差があるかどうか,などが着眼点となる。
炭化水素系ナノ分子についても,引き続き,どうような形で性能評価を実施していく。こちらは,X線粉末解析,TG-DTA,長期収縮評価,長期質量変化,などを主軸として物性評価を行っていく予定である。
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