異なる水セメント比(W/C=0.55と0.40)のセメントペーストにTiO2の混和の有無をパラメータとした実験を行った。その結果、TiO2の添加は、コンクリートの長期強度増大に大きな影響をもつビーライトと呼ばれる鉱物の長期の水和挙動が抑制される傾向にあることがわかった。 また、今回、研究の目的のひとつとした乾燥収縮ひずみについて検討した結果、TiO2の添加はおおむね、収縮を増大させる傾向にあることがわかった。このことは、水和物の結晶化をはばんでいたり、あるいはC-S-Hの析出箇所を変化させているものに起因すると考えられた。一般にセメントの乾燥収縮ひずみは,水和の進行にともなって大きくなる傾向があるが,前述したようにビーライトの水和が遅延しているにも関わらず,TiO2ナノ粒子を混和した場合には,乾燥収縮が大きくなる傾向が確認されたからである。 熱分析や水蒸気吸着等温線試験によれば、TiO2を混和したセメントペーストのすいわぶつ表面は、非常に親水性表面となっていると示唆された。400度以上の脱水は,カルシウムシリケート水和物の脱水と構造変化が伴う段階と知られているが,この部分においてTiO2ナノ粒子の混和の影響が多く,より高い温度にならなければ脱水(シラノール基とCa-OHの脱水縮合)が生じないという傾向が確認された。これはTiO2粒子が一部は,カルシウムシリケート水和物と結合している可能性を示唆している。FE-SEMによってTiO2ナノ粒子はカルシウムシリケート水和物周辺にあることが確認できたものの、結合自体は確認できなかった。 ナノ粒子の添加によってカルシウムシリケート水和物の変質を生じさせうることがあきらかになったので,今後は,より多くのナノ粒子を混和することによって収縮を低減する粒子を検討していく必要があると考える。
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